カンジダに起因する腟炎では533例中472例88.6%,外陰腟炎では239
<症例2>
32歳の独身女性が、予約なしに飛び込んできた。「外陰部がかゆくてムズムズして、仕事にならないんです」
「分泌物が増えませんでしたか?」
「白っぽくてポロポロとしたおりものが出てきます」「最近、性交渉はありましたか?」
「彼氏と別れて、ここ1年くらい性交渉はありません」「最近、風邪をひいたり、抗生物質を服用したりしませんでしたか?」
「風邪はひいていませんが、先週、歯科で親知らずを抜いたので、3日間ほど抗生剤をもらって服用していました」「抗生剤を服用したせいで、膣カンジダになったんだと思いますよ」
診察台に上がってもらうと、外陰部が真っ赤に腫れあがり、ところどころ、皮膚がずり剥けている。「かゆくて、相当、かきむしってしまったようですね」
「夜もかゆくて眠れず、思い切り引っかいてしまったんです。そうしたら、今度は痛みまで加わって、踏んだり蹴ったりです」
「引っかいたことで、二次的に皮膚炎を起こしてしまったのですよ。外陰部の皮膚は柔らかいですから、爪で引っかいたりしたらダメですよ」
膣分泌物検査の結果、やはりカンジダが陽性だった。「膣カンジダはカンジダ・アルビカンスという名前の真菌にかかることによって発症し、患部にかゆみをもたらします。女性のかゆみの原因のほとんどが膣カンジダといっても過言ではないくらいなんですよ」「真菌って、何ですか?」
「聞き慣れない言葉でしょうが、ひらたく言えばカビのことです。水虫の親戚だと思ってください。水虫はスリッパなどの接触によって感染して、患部がかゆくなりますよね。膣にもカビが繁殖すればかゆみがでてくるのです」「膣カンジダは性感染症なのですか」
「広義で性感染症に含めることもありますが、膣カンジダは性交渉とは関係なく感染することがあるんですよ」「普通に生活していても感染するのですか?」
「そうです。空中にいるカビですから」
「へェ」
私は、彼女にカンジダの治療薬である膣錠と併せて、外陰部に塗る軟膏を処方した。「外陰部が皮膚炎をおこしているので、まず炎症をとる軟膏を先にお出しします。お風呂あがりに清潔な手で外陰部に塗ってください。まずは皮膚の回復を待ちましょう。そのためにも、通気性の良い下着を身につけるようにしてください。皮膚を圧迫するガードルやスパッツ、おりものシートなどは極力避けてください」「エッ、おりものが多いのに、おりものシートも使ってはいけないのですか?」
「おりものシートには防水機能がありますから、蒸れやすいのです。長くつけていると雑菌が繁殖しやすい環境になりますので、通気性のよい下着をこまめに取り替えた方がいいのですよ」
「それは知りませんでした」「あなたの場合は皮膚炎をおこしていますから、寝ている間だけでもパンツをはかない方が早く治ります。炎症をおこした外陰部は空気にさらしておいた方がいいのです」
「目から鱗です」「エヘン、これを“ノーパン療法”といいます。私が名付けた治療法です。昼間にノーパンという訳にはいかないでしょうから、せめて寝ている間だけでもノーパン療法に取り組んでください。3日くらい続けると、皮膚は見違えるほど回復しますよ」
「わかりました、やってみます」
1週間後、彼女は来院した。
「先生、ノーパン療法は劇的に効きました。おっしゃったとおり、ノーパンにして3日後には、皮膚の炎症がおさまり、痛みも引きました。膣錠を使ったら、かゆみもおさまり、おりものも減りました」
「それは良かった!」こうしてノーパン信者が一人増えたのであった。
[販 売 名] アレグラ FX、アレグラα、アレグラフレッシュ、アレグラフ
腟錠は、腟内に入れることで薬が広がり炎症をおさえる薬です。
1回1錠の使用で錠剤が腟内にとどまり6日間かけて治すタイプと、1日1錠を6日間連続で使用するタイプがあります。
塗り薬は、外陰部のかゆみや発疹を改善する効果が期待できる薬です。1日2〜3回患部に塗り、数日間連続で使用します。
腟内と外陰部の両方に症状が出ている場合は、腟錠と塗り薬を併用すると高い効果が期待できるでしょう。
市販薬を使用しても症状が改善されない場合や悪化した場合は、薬が正しく使えていなかったり、他の疾患の可能性も考えられるため、医師の診察を受けましょう。
「6か月以内に2回以上発症している方は使用しない」などの使用上の注意が記載されていることもあるため、購入前に必ず確認してください。
購入前に不安なことがある場合は、薬局で薬剤師に相談しましょう。
初めて腟カンジダの症状が出た場合や何度も再発する場合は、他の疾患の可能性もあり、自己判断が難しいため、専門医療機関を受診して治療を受ける必要があります。
いままでに医師の診断を受けたことがない状態で市販薬を使用すると、症状を悪化させてしまう可能性もあるため、医師に相談してみましょう。
生理の前後や妊娠中は、ホルモンバランスが変化します。
このホルモンバランスの変化により、普段は他の常在菌とバランスのとれているカンジダ菌が腟内で増殖し、腟カンジダを発症します。
菌の繁殖を防ぐために、入浴時は腟内まで洗浄しないようにしてください。また、外陰部を洗いすぎることも避けましょう。
ボディーソープでデリケートゾーンをゴシゴシ洗う、ビデを頻繁に使うなど、必要以上に洗浄すると自浄作用が弱まり逆効果となることがあります。
デリケートゾーンは、ぬるま湯でササっと流す程度にすると適度な清潔さを保てるでしょう。
また、性行為の際はコンドームを付けることで、性行為時の感染を防げます。