B.5感染性心内膜炎 Infective Endocarditis


血が出るような歯の治療をしたときには、口の中のバイキンが血管に入って感染性心内膜炎が起きる危険があります。心臓の病気の種類によっては、感染性心内膜炎を防ぐために、(バイキンが増えるのを抑える薬)を飲まなくてはいけません。


[PDF] 感染性心内膜炎発症予防のための 歯科処置時抗菌薬投与の今後

口の中には、500種類以上のバイキンが2000億匹も住んでいると言われています。これは毎日歯みがきをしている場合で、歯みがきがきちんとできていない人は、もっと多くのバイキンがいます。しかも、歯みがきがきちんとできていないと、歯ぐきが弱くなって、血が出やすくなり、バイキンが血管に入り込んで感染性心内膜炎が起きる危険が高くなります。

適切な予防処置をしていても,感染性心内膜炎が起こることがあります。原因不明の発熱が4日以上続く場合,また,何週間も熱が出たり下がったりする場合には血液検査が必要です。御連絡下さい。

侵襲的歯科処置時における感染性心内膜炎(IE)予防のための抗菌薬投与は 1950 年代から行われて

心臓の病気をみてもらっているお医者さんに、「歯みがきをしっかりしなさい」と言われたことはありませんか?これは、口の中のバイキンが感染性心内膜炎の原因として一番多いからです。心臓に病気がある場合は、感染性心内膜炎の危険を減らすために、口の中をきれいに保っておくことが大切です。

A:いいえ、そんなことはありません。心臓に病気があると感染性心内膜炎になる危険が高いといっても、年間の発症率は、0.1%未満に過ぎません
感染性心内膜炎を心配なければいけないのは、熱が1~2週間も続くとか、もらった抗菌薬をのんだら熱が下がったのに止めたとたんに熱が出るとか、体重が減ってやせこけてくるとか、風邪にしてはおかしな症状が続く場合です。

歯科治療における感染性心内膜炎の予防投与について | 診療科のご案内

感染性心内膜炎になると、熱が出て、何日も熱が続きます。からだをだるく感じ、食欲もなくなります。感染性心内膜炎の治療のためには、抗菌薬(バイキンが増えるのをおさえる薬)の注射を1ヵ月以上も続けなくてはなりません。感染が進むと、バイキンのかたまりが心臓の弁を壊してしまう場合があり、手術が必要になることもあります。
心臓に病気がない人に比べると、その理由は、心臓の壁に穴があいていたり、心臓の弁にせまいところや逆流があると、血液が勢いよく心臓の壁にぶつかって、心内膜が傷むからです。傷んだ心内膜にはバイキンがくっつきやすいのです。

ところが、運悪く、バイキンが免疫のしくみをすりぬけて、心臓までたどり着いてしまうことがあります。心臓にたどりついたバイキンは、心臓の内側の組織(心内膜)にくっついてバイキンの数を増やします。心臓はからだじゅうに血液を送り出していますから、バイキンも全身に広がってしまいます。これが感染性心内膜炎という病気です。

「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」には、 「予防的抗菌薬投与を行うことが強く推奨される手技に


そのような中、我が国のガイドライン*3では「高リスク患者に対し推奨する」「中等度リスク患者に対し提案する」と記されており、しています。感染性心内膜炎の死亡率は高く、もし発症すれば重篤な結果を招きます。抗菌薬の予防投与で救える患者さんは多くないかも知れませんが、1回の内服で感染性心内膜炎による身体的苦痛、生活への悪影響、経済的ダメージが回避できる可能性があるのならば意義があるという判断です。

感染性心内膜炎の発症や重症化のリスクと、菌血症が発生しやすい検査や治療についてまとめた表です。表上段の「感染性心内膜炎の発症や重症化のリスクとなる疾患や患者背景」が高リスクの場合が「高リスク患者」、中等度リスクが「中等度リスク患者」です。

参考資料:日本循環器学会 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)


#1 予防投与が必要な患者. ・人工弁. ・心内膜炎の既往. ・先天性心疾患. ・根治的に修復されていないチアノーゼ性心疾患.

このような議論を踏まえて、フランス(2002年)、米国(2007年)、欧州のガイドライン(2009年)では、相次いで(中等度リスク患者には投与しない)と改められました。2008年には、英国国立医療評価機構(NICE)がさらに踏み込んで、高リスク患者・中等度リスク患者どちらに対してもことを提言しました。
英国では、NICE提言直後の5年間(2008〜2013年)に、抗菌薬の予防的処方件数は提言前の2割以下に減少し、感染性心内膜炎の発生はわずかですが統計学的に有意に増えてしまいました*1。その増加は、高リスク患者だけでなく中等度リスク患者でも認められました。
さらに、2004〜2014年の予防投与の集計*2では、第一選択薬であるアモキシシリンの処方が300万件近くありましたが死亡例は皆無で、アモキシシリンの安全性は極めて高いことがわかりました。これら2つの事実により、アモキシシリンを予防投与することの正当性が暗に示された形になりました。

感染性心内膜炎. 難易度:. 疾患名:感染性心内膜炎の予防(適応外使用).

予防投与の具体的な手順としては、アモキシシリン2g(通常用量の2日分)を、処置の1時間前に1回で内服することが推奨されています。処置や治療を行う間とその直後に、抗菌薬を効果的に効かせるためです。ペニシリンアレルギーがある場合には、クリンダマイシン・クラリスロマイシン・アジスロマイシンなどが代替え薬として提案されています。

[PDF] 歯科医療機関における感染性心内膜炎予防に関する実態調査

歯科処置後に発生する一過性の菌血症(血液中に細菌が侵入すること)は非常に高率で、抜歯後はほぼ100%発生すると言われています。歯科処置を行う時に、感染性心内膜炎の予防目的で抗菌薬を投与することが1950年代から多くの国で推奨されてきました。
しかし、抗菌薬の予防投与によって、抜歯後の菌血症の発生が減ったという報告はありますが、感染性心内膜炎の発生が減ることを直接証明した報告はありません。また、「日常の歯磨きやデンタルフロスの使用でも軽微な菌血症が日常茶飯事的に起こるので、歯科処置の時だけ抗菌薬を処方しても意味はない。それより、口腔衛生を徹底する方が重要だ」という指摘もありました。さらに、抗菌薬アレルギーなどの副作用や、抗菌薬が効かない耐性菌の発生を助長する可能性などのデメリットも心配されてきました。

性を考慮した治療戦略が重要である。 ・感染性心内膜炎の高リスク患者(人工弁置換患者、IE の既往患者、先天性心疾患等)に対し

その後、NICEのガイドラインは2016年に、「感染性心内膜炎に対する抗菌薬の予防的投与は、日常的には推奨されない(Antibiotic prophylaxis against infective endocarditis is not recommended routinely)」と改訂されました。歯科処置を行う時に当たり前のように抗菌薬を処方することは推奨しないが、抗菌薬を予防投与すべき患者さんはおられるという事実を認めた改訂でした。

「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」にて、感染性心内膜炎高リスク患者の抜歯に推奨されている抗菌薬は? 【選択肢】.

感染性心内膜炎の発症や重症化のリスクとなる疾患や患者背景と、菌血症が発生しやすい検査や治療について、それぞれ高リスクと中等度リスクに分けて主なものを列挙しています。

参考資料:日本循環器学会 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)

抜歯前に感染性心内膜炎ハイリスク患者にサワシリンを2グラム予防投与したいのですが、保険請求はどのようにしたらよろしいでしょうか。

一方、我が国のガイドライン*2では、としています(下の表)。また、菌血症が高リスクの医療行為には「抗菌薬投与を行うことを強く推奨」し、中等度リスクの医療行為にも「抗菌薬を投与した方がよいと思われる」としています。諸外国のガイドラインに比べて、救済範囲を大きく広げた考え方です。この点に関しては、サイドメモ「抗菌薬予防投与にまつわる話」をご参照ください。

生物質の予防投与の主な適応症は、感染性心内膜炎(IE)および人工関節インプラント感染

多くの国のガイドラインでは、が、菌血症が起こりやすい高リスクの医療行為(治療や処置、下の表)を受ける時だけに限って、感染性心内膜炎の予防のために抗菌薬を内服することを推奨しています。費用対効果を考慮して、抗菌薬の予防投与を感染性心内膜炎の高リスクの場面だけに限定しようという考え方です。

[PDF] 歯科処置に関連した菌血症と感染性心内膜炎 抗菌薬予防投与の現在地

手術の目的は、感染巣(感染した組織)を完全に取り除いて細菌をできるだけ残さないようすることと、損傷した組織を修復することです。感染巣が疣贅の付着した弁に限られている場合は、あるいは僧帽弁であればを行うだけで、感染巣の除去と組織の修復という2つの手術目的は達成されます。弁周囲の組織破壊がひどい場合は、感染組織を取り除いた後にウシやブタの心膜で欠損部位を再建修復する必要があります。

抜歯などの歯科処置により生じる一過性の菌血症が,感染性心内膜炎発症の原因となることが古くか

A:いいえ、そうではありません。
感染性心内膜炎にかかった大人の患者さんのデータですが、発症前の3ヵ月間に歯の治療(血が出る治療)を受けたことがあった人は、わずか5%でした。むしろ、感染性心内膜炎の原因の多くは、ふだんのちょっとした口の中の出血だと考えられています。ですから、毎日しっかり歯みがきをして、口の中をきれいに保っておくことが大切なのです。
他には、心臓の手術が感染性心内膜炎の原因となることもありますので、手術後6ヵ月以内の発熱には注意が必要です

感染性心内膜炎を疑います。 心臓の弁が細菌感染を引き起こすと、塞栓症、脳梗塞、動脈瘤などを合併することがあり、

内科的な治療で持ち堪えられなくなった場合は、手術が必要です。手術が必要なのは、心不全が内科的治療では治せないくらい重症となった場合、適切な抗菌薬を3〜5日間投与しても高熱がひかず白血球数やCRP*1などの検査所見の改善がみられない場合(治療抵抗性感染症)、疣贅が1cm以上と大きいあるいは拍動のたびに激しく動くなど塞栓症(疣贅片が動脈に詰まること)の危険性が高い場合です。

「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」では,感染性心内膜炎を ..

疣贅内は血流が乏しく抗菌薬が行き渡りにくいので、通常より多めの抗菌薬を長めに投与します。適切な抗菌薬を選択できるかどうかがキーポイントですので、血液培養は非常に重要です。血液培養の結果が出るまでには数日かかりますが、その間は、患者さんの病状や背景(急性か亜急性か、人工弁置換術後か否かなど)から原因菌を推定しそれに対応する抗菌薬を選択します。血液培養の結果が出たら、薬剤感受性試験の結果を参考にして原因菌に有効な抗菌薬を選択します。抗菌薬の点滴は4〜8時間毎に行い、人工弁置換術後の場合は6〜8週間、そうでない場合は4〜6週間継続します。他の感染症での抗菌薬の点滴は1日1〜2回、投与期間は数日から2週ほどです。治療開始後72時間を目安に、発熱などの症状や検査結果に基づいて抗菌薬の効果を判定します。最も重要なのは、血液培養で原因菌が検出されなくなることです。抗菌薬が効いて治療がうまく行っている場合は、1週間以内に解熱して全身状態が改善します。

あなたのクリニックに感染性心内膜炎の患者さんが来院したら?予防的抗菌薬投与の基準などガイドラインから徹底解説。

感染性心内膜炎は、未治療のままだとほぼ100%死に至り、治療を行っても院内死亡率(入院中の死亡率)は15%以上と高率です。とくに、人工弁の感染性心内膜炎の予後(疾病の医学的な見通し)は良くありません。感染性心内膜炎は診断が難しい病気ですが、的確に診断してできるだけ早く抗菌薬を開始することが肝要です。