岩田 健太郎『抗菌薬の考え方,使い方 ver.5 コロナの時代の差異』
タイトルを見て「えっ」と思った先生はご用心ください。例えばニューキノロン系のレボフロキサシンを、外来で熱のある患者さんに何のためらいもなく出していませんか?あるいは、慢性の咳患者に、マクロライド系のアジスロマイシンを“とりあえず”出していませんか?実はこれらは全て間違った抗菌薬の使い方なのです。「おそらく現在使われているニューキノロンやマクロライドの8割くらいが間違った使われ方をされているんではないでしょうか」と岩田健太郎先生。副作用が少ないから、使い慣れているから、と言って漫然と抗菌薬を出してはいけません。 第5回ではニューキノロンとマクロライド、そして、マクロライドの親戚クリンダマイシンとテリスロマイシンといった抗菌薬の正しい使い方を明解に解説します。
大曲貴夫, 岩田健太郎 国立国際医療研究センター病院副院長・AMR臨床 ..
番組に参加していただいた研修医の皆さんからの感染症についての質問に岩田先生が答える、一問一答形式のスペシャル番組。「肺炎を治療しても治らない」「偽膜性腸炎のマネジメントは?」「ドラッグフィーバーを考えるのはどんなとき?」「アミノグリコシドってやっぱり怖い」などなど、現場ならではの疑問に岩田健太郎先生が明解回答。明日からすぐに使える感染症マネージメントのノウハウを習得していただけるはずです。
Ver.5のまえがき
言うまでもないことですが,本書Ver. 5と前作Ver. 4の最大の違いは,コロナ前か,以後か,という点ですね.覚えていーますーかー♪ コロナの前のーじだーいー♫.
けれども,コロナにみんなが注目している間に,抗菌薬の世界も大きく変化しています.多剤耐性グラム陰性菌対策の切り札,と目されていたコリスチン(ポリミキシン)はすでに「時代遅れの薬」扱いされています.その一方,緑膿菌には効くんだけど可もなく不可もなしで,どうも個性ねえなー,と格下扱いされていたアズトレオナムが耐性菌対策の真打ちレベルにまで下剋上していたりします.コロナに気を取られて勉強を怠っていると,まじで,時代に乗り遅れますぜ.
とはいえ,本書はそういう世の中のトレンドに乗っかるだけの本ではありません.あくまでも「考え方」の本ですから,「コリスチン,格下げだってよ」みたいな豆知識(だけ)を提供したいわけではないのです.なぜ,そうなのか,を丁寧に......別名,ねちっこく......理路を示すのが本書の目的です.
こういうときは,ああやっとけ.こういう「ハウツー」なアプローチは楽なんです.そして便利なんです.実際,このアプローチが有効な疾患も多いです.
ま,典型的なのは COVID-19ですね.今(2022年2月)はオミクロンな第6波の真っ只中にあります.日本では臨床感染症のプロは希少種ですから(だれだ,奇行種って言ってる奴は.当たってるけど),こんな巨大なパンデミックにスタンドアローンで立ち向かえるわけがありません.というか,重症COVIDは9割がた集中治療の専門領域でケアする疾患ですから,「ECMOの使い方も知りませーん」な我々(少なくとも俺)では歯がたたないのです.
というわけで,超大量の感染者に立ち向かうには大多数は自宅待機ー,相当数はホテル待機ーな公衆衛生な対策のみならず,軽症だったらゼビュ打って帰してください.
みたいな「ハウツー(R) 」で,非専門家の皆様にアウトソーシングするしかないんです.このゼビュ(ゼビュディ(R),ソトロビマブ)が,少し前は「ロナ」(ロナプリーブ(R) ,本文 Bonus Track 参照)だったりするわけですが,「そこ」はあんまり気にしなくていい.アルゴリズムの「ロナ」が「ゼビュ」に変わるだけで,とりあえず,こういうときは,ああやっとけ,型で,「今日から私もコロナ医者」になれるわけです.そう,あなただって,今からだって.
しかしながら,リアルワールドの患者さんは多様であり,型通りのパターン認識的な対応が通用するシーンはとても限定されています.実際には「こういうときは,どうすればよいのか ??」と悩みに悩むことも多いのです.いや,ちゃんと勉強して,考えている人ほど悩みは多いといってもよいでしょう. ぼくは『本質の感染症』(中外医学社)という本も書きましたが,本書は「本質の抗菌薬」と呼んでもよい存在です.抗菌薬の本質はどこにあり,目の前の多様な患者にどういう根拠で何を目指して使うのか?を丁寧に,ねちっこく考えるのです.考える,といってもそんなに巨大な頭脳を必要とするわけではありません.なにしろ,書いてる俺の頭脳がかなり残念な脳みそで,現在進行形で絶賛萎縮中ですから.「丁寧に考える」のに巨大な頭脳は要りません.必要なのは考えるのを止めないこと.みんな,途中で面倒くさくなって,考えるのをやめちゃうんです.
コロナの時代になって,一部の医療現場で抗菌薬使用がとても雑になりました.ろくに培養も取らずにタゾピペー(R) ,メロペーン(R) ,と脊髄反射的に(頭脳を使わずに)出しています.面倒くさくなって,考えるのをやめちゃってる.怖いから考えたくないっ,つーのもあるとは思いますが.
本書は怖くないので,ゆっくり丁寧に,端折らずに読んでください.すぐに読破しなくてもいいし,僕を論破しようと挑みかかってこなくてもよいです.お茶でもすすり,クッキーでもかじりながら 1 ページ,1 ページのんびり読んでいただければ大丈夫です.想定している読み手は,学生,看護師,薬剤師,臨床検査技師,研修医たちですが,シニアのドクターたちも読めばいろいろ発見があると信じています.僕らは死ぬまで勉強し続けることを義務付けられていますから(まじで),生涯学習のお供に本書を使っていただいてもとても嬉しいです.
2022年2月
岩田健太郎
岩田 健太郎 2 , 荒木 敬司 3 Shoko NAKATANI 1 , Toshihiro ..
ST合剤とアミノグリコシド・・・そう聞いてもあまりピンとこない方が多いかも知れません。確かにちょっとプロ向きの抗菌薬。どちらも副作用が多く、アミノグリコシドは血中濃度のモニターが必要です。しかし、少なくとも外来で無造作に出されているニューキノロンなどよりも重要な抗菌薬だと、岩田健太郎先生は話します。まずはこの2つがいかに有用な抗菌薬であるかを学んでください。そして、副作用など煩わしい面もありますが、その特徴的な“クセ”を掴んでしまえばそれほど怖いものではないことを知ってください。またこの2つの抗菌薬は、いかに感染症や抗菌薬について熟練しているかを計る手頃な試金石と言ってよいでしょう。是非、この2つの抗菌薬の使い方をマスターして臨床力をアップグレードしてください!
岩田健太郎 神戸大学大学院医学研究科 微生物感染症学講座感染治療学 教授 編集主幹
岸田直樹 感染症コンサルタント 北海道科学大学薬学部客員教授 編集委員
忽那賢志 国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室医長 編集委員
坂本史衣 聖路加国際病院QIセンター 感染管理室マネジャー 編集委員
山田和範 中村記念南病院薬剤部 編集委員
山本 剛 神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部 編集委員
[Special Topic] 日本の感染症界全体をでっかく論じよう大曲貴夫,岩田健太郎[新企画]HOT TOPIC 田村 豊 ..
目 次
【1】学生,研修生のみなさんに,まずはここだけおさえとけば大丈夫,の10の掟
おきて (1) 患者の重症度を把握しよう
おきて (2) 必要な培養検査を採り,グラム染色を依頼しよう
おきて (3) 血液培養の採り方を知ろう.カテ先培養は原則禁忌
おきて (4) 腎機能をチェックしよう
おきて (5) 使用中の薬は全部チェックしよう,検査は時系列でチェックしよう
おきて (6) アセスメントを立てよう
おきて (7) 最初は広域抗菌薬 培養結果を見てde-escalation
おきて (8) 抗菌薬が効いてない,と思ったら抗菌薬を変えない
おきて (9) 患者が良くなっているか,悪くなっているか,どちらでもないのか確認しよう
おきて (10) 失敗症例から学ぼう
【2】感染症診断のコツ
A 時間と空間
【3】空間と身体診察
A リンパ節腫脹の考え方
B 関節痛・関節炎の考え方
C 皮疹の考え方
D 陰性所見も大事
【4】グラム染色を活用しよう
A まずPK から
B Vd とタンパク結合能
C PD とタイムキルカーブ,そして薬剤感受性
D 殺菌か,静菌か
【5】臨床的微生物の理解の方法
A Inoculum effect
B Eagle effect
【6】コンタミとコロニーの違い
【7】臨床薬理学を考える
【8】Inoculum effect とイーグル効果
【9】ポストアンティビオティック エフェクト(PAE)
【10】シナジー効果
【11】時間依存性と濃度依存性
A 濃度依存性の抗菌薬
B 時間依存性の抗菌薬
【12】MICの縦読みにはご用心
A MIC を気にしなければならない代表的な感染症
B ブドウ球菌
C その他
【13】βラクタマーゼ
A ESBLs
B Amp C βラクタマーゼ量が大事
【14】カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)
【15】ビギナーとの違いがビビッ.抗菌薬の使い方が上手になる中級編の10 のステップ
ステップ (1) ESBL 産生菌にはセフメタゾールを使おう
ステップ (2) 抗菌薬の終わり方をイメージしよう
ステップ (3) 経口第三世代セフェムを使うのは止めよう
ステップ (4) 治療効果判定のためのグラム染色
ステップ (5) エスカレーションをマスターしよう
ステップ (6) 患者のパラメーターに齟齬が生じたときの対応法を学ぼう
ステップ (7) 抗菌薬が「効いてない」ときの対応法を学ぼう
ステップ (8) エコノミカルな抗菌薬を選ぼう
ステップ (9) ローカルファクターを活用しよう
ステップ (10) 最良の抗菌薬を選ぼう.モナドロジーのすすめ
【16】抗菌薬の「変え方」
【17】治療期間の問題
【18】ペニシリン すべての基本はここにあり
A ペニシリンの作用とは?
B ペニシリンの薬理作用
C おそるべし,βラクタマーゼ
D ペニシリンの分類を試みる
E ペニシリンG(点滴薬)の使い方
F ペニシリンG が第一選択となりやすい病原体(マニアックなもの含む)
G 筋注用ペニシリン(特にbenzathine penicillin について)
H ペニシリン系抗菌薬の副作用
I アミノペニシリン
J 緑膿菌に効果のあるペニシリン
K βラクタマーゼに対抗する
【19】セファロスポリン ほとんど誤用されてます(涙).正しく使えば強力な武器!
A セファロスポリンの魔
B セファロスポリンの基礎
C 黄色ブドウ球菌やレンサ球菌に使えるセファロスポリン
D 肺炎球菌,尿路感染を狙うセファロスポリン
E 第3 のグループ,セファマイシン(セフメタゾール)
F 第4 のセファロスポリン ─ 緑膿菌をたたけ!
G 胆道移行性? セフォペラゾン・スルバクタムの立ち位置とは
【20】カルバペネム・アズトレオナム
A カルバペネム
B アズトレオナム ─ 副作用の少ないアミノグリコシド?
【21】スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)
A ST 合剤とは
B サルファ剤の副作用
C ST 合剤に対する耐性のメカニズム
D 尿路感染
E 呼吸器感染
F 皮膚軟部組織感染症(SSTI)
G その他のグラム陰性菌感染症
H ST 合剤とHIV 感染
I ウィップル病
J 類鼻疽
【22】ダプソン
【23】キノロン系抗菌薬 ─ フルオロキノロン
A フルオロキノロンの構造と作用
B フルオロキノロンの使い方
C フルオロキノロンの絞り込みを試みる
D Trovan(R) の栄光と失墜
【24】マクロライド系抗菌薬
A マクロライド
B クリンダマイシン
【25】グリコペプチドとリポペプチド,その他の抗MRSA薬
A バンコマイシン
B テイコプラニン
C ダプトマイシン
D リネゾリド
E テジゾリド
F キヌプリスチン─ダルフォプリスチン
G Oritavancin
H Delafloxacin
I Telavancin
J Lefamulin
【26】ムピロシン
【27】アミノグリコシド
A アミノグリコシドの薬理学
B アミノグリコシドの使い方
C アミノグリコシドと毒性
【28】テトラサイクリン
【29】チゲサイクリン
【30】クロラムフェニコール
【31】メトロニダゾール
A メトロニダゾール
B チニダゾール(チニダゾール「F」)
【32】ホスホマイシン・コリスチン
A ホスホマイシン
B コリスチン(ポリミキシン)
C リファキシミン
【33】抗真菌薬
A アゾール
B アムホテリシンB
C エキノカンディン
D フルシトシン
E テルビナフィン
F Isavuconazole
【34】抗ウイルス薬
A 抗インフルエンザ薬どう使うかは,悩ましい
B サイトメガロウイルス治療薬
C 単純ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス感染症の薬
D 肝炎ウイルスの治療薬
【35】抗結核薬
A さて,前置きはこのくらいにして本題に入りましょう
B ファーストラインの抗結核薬
C セカンドラインの抗結核薬
D 困った合併症
【36】寄生虫の治療薬
A マラリア
B 赤痢アメーバ
C ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)
D クリプトスポリジウム症
E サイクロスポラ,イソスポラ症
F アフリカトリパノソーマ症,アメリカトリパノソーマ症,リーシュマニア症
G 自由生活アメーバ症
H 吸虫症
I 条虫症
J エキノコッカス症
K 回虫症
L 鉤虫症
M 鞭虫症
N 蟯虫症
O 旋毛虫症
P 糞線虫症
Q 顎口虫症
R フィラリア症
S トキソプラズマ症
T 疥癬
【37】ひとつギアを上げた,抗菌薬の考え方,使い方
A 出てる菌全部カバーするの?
B Blaz 陰性でde-escalation できるか
C グラム陰性菌のIE?
D キーワードをつなげても物語はできない
【38】新型コロナウイルス感染の治療
【BonusTruck1】MALDI-TOF,マルチプレックスPCR,そして新型コロナの時代の抗菌薬の考え方,使い方
A 抗体療法と感染症
B COVID-19 に対する抗体療法
C その将来性と懸念材料
【BonusTruck2】新型コロナウイルスと抗体カクテル療法
A 抗体療法と感染症
B COVID-19に対する抗体療法
C その将来性と懸念材料
おわりに
索引
副作用も少なく、比較的気軽に処方しやすい抗菌薬がセファロスポリン。そのせいか、日本には本当に多くの種類のセファロスポリンがあります。岩田健太郎先生は「ある種のペニシリンなど本来あるべき抗菌薬がなく、必要のないセファロスポリンが数多く存在するというのは、日本ならではの忌々しき状況ですね」と嘆きます。さて、そんなセファロスポリンをどう選び、使うべきでしょうか。まず世代でこの抗菌薬を分類するのはやめましょう。世代分類ではこの抗菌薬の作用をうまく分類することができず、“第○世代のセファロスポリン”と覚えると、致命的な失敗につながりかねません。気軽に使えるというメリットが、実は危険な落とし穴になっているのです。今回は岩田流のセファロスポリン分類、使用法からちょっとしたコツまでをご紹介。あんなにややこしかったことがウソのようにスッキリします!
岩田健太郎氏が選ぶCOVID-19必読論文|注目の臨床ニュースの · 岩田健太郎氏が選ぶCOVID-19必読論文|注目の臨床ニュース ..
[Special Topic]
日本の感染症界全体をでっかく論じよう
大曲貴夫,岩田健太郎
[新企画]HOT TOPIC
田村 豊
高校生による抗菌薬の適正使用に関する意識調査
[新連載]研修医のための微生物レクチャーシリーズ
グラム染色所見と培養結果からどう考える?(1)
黒田浩一
グラム陽性球菌編 1
移植後感染症レクチャーシリーズ(13)
冲中敬二
同種移植後の下痢
抗菌薬選択チェックメイトへの道(13)
山田和範
To do, or not do:that is the question.
集まれ!! グラ染野郎(13)
鵜川竜也
日本全国感染症ケースカンファレンス道場破り(13)
忽那賢志
やっぱり猫が好き(vs長崎大学病院感染症内科 安田一行)
微生物検査の志士たち(13)
磯崎将博
今こそ見直そう! 下痢原性大腸菌検査法
教えて感染症の病理(13)
砂川恵伸
臓器編 発熱,右上腹部痛,Murphy’s signを診たら胆嚢炎を疑う
微生物検査危機一髪!(13)
山本 剛
この検体はどうやって採ればよいですか?
感染症カンファレンス実況中継(12)
富樫篤生
岩見沢市立総合AST,危機一髪!
泣く子も黙る感染対策(13)
坂本史衣
感染源になりうる病院環境(前篇)
本質の感染症(13)
岩田健太郎
知性の劣化
Dr.岸田の感染症コンサルタントの挑戦(13)
岸田直樹
Process 3 病院ごとのニーズに合わせた介入 2
統計学のABC(7)
吉村健一
プロペンシティスコア〜新しい交絡調整の方法
今月のカビ!! (13)
亀井克彦
リファレンスセンターを上手に使おう―真菌症の診断に困ったら?―
抗菌薬相互作用整理BOX(13)
山田和範
基礎疾患が加わると禁忌に!?〜コルヒチンとクラリスロマイシン〜
渡航医学B級情報局(8)
勝田吉彰
いよいよ宇宙にも耐性菌が!?
基礎から臨床につなぐ薬剤耐性菌のハナシ(13)
西村 翔
混同しがちなCREとCPEのハナシ 1
感染症疫学入門ズームアウト!(13)
石金正裕
生存解析―イベント発生までの時間を考慮した解析をしよう!
正しく恐れる結核診療のすすめ(13)
大藤 貴
典型的な肺結核症例に学ぶ:無気肺の原因としての肺結核症
動物と環境由来耐性菌の現状と対策(2)
田村 豊
日本における抗菌薬の使用量と耐性菌の出現状況
ますますTDM(13)
望月敬浩
Sawchuk—Zaske法(中編)
非“専門家”のためのHIV感染症との関わり方(13)
塚田訓久
新薬との付き合い方
子どもと大人の感染症(12)
齋藤昭彦
小児感染症領域の英語論文(その2)―どの雑誌に投稿するか?―
意外と知らない!? 肝臓のキモ(13)
松尾裕央
HBVとステロイド
今日も明日もAMR対策(8)
具 芳明
薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン前半で何ができたのか 2
抗菌薬アナザーストーリーズ(13)
滝 久司
Learn more about vaccines(vaccines & immunizations)
This wormy world〜ようこそ!寄生虫の世界へ〜(13)
中村(内山)ふくみ
御三家(その2の2)セイロン鉤虫
呼吸器感染症よもやま話(13)
倉原 優
吸入ステロイドによる細菌性肺炎
ICDのホンネ(13)
横田恭子
壮大な命題にとりあえず取り組んでみる
感染症に対する漢方薬の考えかた,使いかた(12)
加島雅之
皮膚・軟部組織感染症への漢方薬の考えかた,使いかた
J−IDEO Journal club(13)
国立成育医療研究センター感染症科
淀川キリスト教病院小児科
名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部
兵庫県立こども病院感染症内科・救急総合診療科
Book Review
『抗菌薬の考え方、使い方ver. 4 魔弾よ、ふたたび…』 評者:原田壮平
バックナンバー
次号予告
岩田健太郎 神戸大学微生物感染症学講座感染治療学教授 著
長岡 健太郎, 栁原 克紀, 原田 陽介, 山田 康一, 右山 洋平,
本号のスペシャルトピックは「日本感染症界全体をでっかく論じる」.
デング熱やエボラ出血熱などの輸入感染症や薬剤耐性菌,抗菌薬適正使用といった臨床上の諸問題,
あるいは感染症に関連する制度の変更など,ここ数年は感染症業界にとって激変の時代といえるのかもしれません.
そこで今回は,国立国際医療研究センターの大曲貴夫先生をゲストに迎え,
ホストの岩田健太郎先生とともに「日本感染症界」という大きなテーマを縦横無尽に語りつくしていただきます!
岩田 健太郎 (編集主幹) / 岸田 直樹 , 忽那 賢志 , 坂本 史衣 , 山田 和範 ..
世界標準の感染症マネージメントを知り抜いた岩田健太郎先生が、抗菌薬の選び方、使い方、考え方を一から指導します!今回は、現在日本で行われている間違った抗菌薬の使い方を通して、抗菌薬を選ぶときや使うときの基本になる考え方を伝授します。
岩田 健宏, 西村 慎吾, 佐古 智子, 和田 耕一郎, 枝村 康平, 小林 泰之, 荒木 ..
岩田健太郎 編集主幹 / 岸田直樹 編集委員 / 忽那賢志 編集委員 / 坂本史衣 編集委員 / 山田和範 編集委員 / 山本 剛 編集委員
2)岩田健太郎監修、岡秀昭監訳.感染予防、そしてコントロールの ..
岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)
岩田 華奈,加賀良 孟,田浦 拓朗,落合 信亮,太田浩一朗,釜池 和 ..
difficile感染症(CDI)に対しては内服薬を使用します。
血中濃度を測定して投与量を調節する必要がある薬剤です。VCMと同系統の薬剤です。
組織移行性はよく、副作用は少ないです。血漿蛋白結合率が高く血中濃度が上がりにくいため、投与開始時は投与回数を多くしたり、血中濃度測定をして投与量を調整したりする必要があります。殺菌的に作用する抗MRSA薬です。
血流感染症、皮膚軟部組織感染症、バイオフィルム透過性もよく術創部感染症にも使われます。肺サーファクタントで失活するため肺炎には使用できませんし、髄液移行性も悪いです。バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRE)・腸球菌に対して有効性がある薬剤です。
骨・肺・髄液への移行もよいですが、静菌的な薬剤でありVCMが使用できる場合はそちらを用いたほうがよいです。腸管吸収率が高い内服薬もあります。
骨髄抑制(とくに血小板減少)、末梢神経障害などの副作用があります。LZDと同系統の新規薬剤です。LZD耐性でも感受性が保たれていることもあります。
血小板減少はLZDより少ないとされています。グラム陽性球菌・横隔膜上の嫌気性菌への活性が強いことが特徴の薬剤です。また骨組織への移行性がよいことから整形外科領域の感染症でも頻用します。
横隔膜下の嫌気性菌には耐性化が進んでいます。嫌気性菌に殺菌的に採用する薬剤です。中枢神経を含む組織移行性が良好で、腹腔内感染症・脳膿瘍にβラクタム系と併用します。またCDIの第一選択薬でもあります。
消化器症状、末梢神経障害、脳症などの副作用があります。MRSAを含む黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、腸内細菌などの活性があります。腸管吸収は良好で、中枢神経・前立腺などへの組織移行性もよいです。
市中の尿路感染症の第一選択です。ニューモシスチス肺炎やトキソプラズマ症などの特殊な感染症にも使用します。
薬剤熱・薬疹、肝障害、骨髄抑制などの副作用があります。テトラサイクリン系のスペクトラムに加えてVRE、グラム陰性桿菌、嫌気性菌にも有効な薬剤です。
ESBL産生菌、多剤耐性アシネトバクターへの効果が期待されていますが、緑膿菌には効果がありません。胆汁腸管への移行はよいですが、関節・骨・髄液への移行は悪いです。悪心などの消化器症状が多いです。大腸菌など多くの腸内細菌(キャンピロバクターは除く)に活性があり、CDIにも有効です。
消化管から吸収されず、腸管内感染症の治療に用いる薬剤です。これらの理由から、菌血症を疑う状況では使用できません。
日本では「肝性脳症における高アンモニア血症」にのみ承認されています。グラム陰性桿菌に殺菌的に作用する薬剤です。
腎毒性・神経毒性といった副作用で販売中止となっていましたが、多剤耐性グラム陰性桿菌(緑膿菌・アシネトバクターなど)への有効性のために再度販売されるようになりました。
カルバペネム系などとのシナジー効果があり、併用して投与します。CDIに対する新規薬剤です。
VCMと同等の効果で、再発が少ないとされています。ただ値段が高いため、NNZやVCMで治療失敗・再発するような症例でのみ使用を検討するべきです。非常に低分子で組織移行性がよく、スペクトラムも広く、アレルギーも少ない薬剤です。
米国では下部尿路感染症にしか適応がなく、教科書的な記載はあまりなされていない薬剤です。また日本で販売されている内服薬は腸管吸収率が悪いことも、米国との違いです。
病原性大腸菌O157H7感染症における溶血性尿毒症症候群の予防効果も示唆されています。本記事を手掛けていただいた副島先生に監修いただき「頻用抗菌薬の使い方早見表」をご用意しました。臨床現場で見やすいよう、今回解説いただいた内容から、通常使用量・通常投与量や適応菌種、さらに使い分けのポイントなどを一つの早見表にコンパクトにまとめたものとなります。出力して持ち運ぶのはもちろんタブレットでの閲覧もしやすくなっています。
以下より無料でダウンロードができますので、ぜひこの機会にお役立ていただければと思います。