*1:95%CIの上限が非劣性基準である1.8%未満を達成し、プラセボに対するリベルサス®14mgの非劣性が検証された。 ..


副作用モニター情報<359><374> シタグリプチンの急性膵炎と薬剤性肝障害


虚血性腸炎とは、左側大腸(下行結腸・S状結腸)の動脈末梢が閉塞・狭窄し、大腸 ..

DPP-4阻害剤は、低血糖のリスクが少なく使いやすい、という評価がある一方で、まだ使用実績が世界的にも少なく、新しい作用機序の薬剤で未知の副作用、重大な副作用を懸念する声も多くあります。
FDA(アメリカ食品医薬品管理局)では2006年10月~2009年2月のシタグリプチン使用患者における急性膵炎の市販後調査症例88例(出血性や壊死性含む)の報告を受け添付文書の改訂を行い、注意喚起を行いました。急性膵炎の詳細な発症機序は不明ですが、アルコールと胆石の2大要因が言われており、「胆道系の既往がある患者、膵炎の既往がある患者への投与は慎重を期すべきである」としています。日本でも2011年1月の添付文書改訂で急性膵炎が「重大な副作用」に追記され、以降も数例の報告が挙がっています。当モニターにも2011年度1年間でグレード2以上の急性膵炎が2例報告されています。

どちらの症例も投与から半年以上経過していることから、薬物の代謝産物の蓄積と個体側の感受性が関与していると思われます。発症機序は不明ですが、急性膵炎がシタグリプチンによる副作用の可能性は否定できない、あるいは可能性が高いと思われます。投与する場合は適切なモニタリングを行って上腹部の痛みや吐き気がないかチェックし、膵炎の症状が発現した場合は、即中止すべきです。
肝機能障害については、2011年度は当モニターに5症例報告されています。1例は投与期間不明ですが、投与後1~7ヵ月と比較的早期に発症しています。いずれも服用開始後の発症で、シタグリプチンによる副作用の可能性が高いと思われる症例です。
このほか、消化器症状や低血糖(単独投与またはSU剤併用)、発疹などの皮膚症状、間質性肺炎などの重篤な副作用など、数多く報告されています。投与の際は、定期的に臨床検査値を測り、異常変動には注意が必要です。患者の状態を観察し、服薬指導では注意喚起が必要です。

しかしついに内服薬が開発され、2021年から「リベルサス」が使用できるようになりました。

DPP-4阻害剤の薬理作用を詳細に検討すると、インクレチンの増加が膵β細胞を活性化し、次いで血管新生因子VEGFが活性化、そして、それに関連する有害作用が出現する、という懸念があります。ひとつは、癌の発症が増えることです。多くの癌はVEGFを利用して成長する性質を持っていますので、まだ小さい状態の癌が大きくなるスイッチのような役割を果たしてしまう可能性があるからです。
もう一つは先にも触れましたが、RS3PE症候群という、リウマチ反応が陰性にもかかわらず、関節滑膜の毛細血管が増殖することにより、まさにリウマチ様の多発性両側性の関節炎が発症する副作用です。MMP-3というマーカーを指標に血液検査で確定することができます。
さらにもう一つ、シタグリプチンの臨床試験の時に傾向が出ているのが、網膜症の増加です。糖尿病の合併症として網膜症を捉えるのが一般的ですが、現段階では薬剤性なのか疾患によるものなのか判別がつきません。脆弱な新生血管が増えることで網膜症が発症するわけですから、VEGFが活性化することで網膜症の頻度が増える可能性は否定できません。糖尿病性黄斑浮腫などの網膜疾患をラニビズマブのような抗VEGF製剤で治療するのと反対の意味を持ちます。糖尿病治療の全体の視点に立つと、DPP-4阻害剤による治療の失敗という危険が潜んでいるのかもしれません。

製剤糖尿病の新しい治療薬として、2010年6月にリラグルチド皮下注(商品名:ビクトーザ)、同12月にはエキセナチド皮下注(商品名:バイエッタ)が発売されました。2013年に週1回製剤が登場し、2021年には初の経口薬としてセマグルチド(商品名:リベルサス)が発売となりました。インクレチンホルモンGLP-1の受容体作動薬で、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制する作用があります。胃排泄遅延作用があり、食欲を抑制することから、体重抑制を期待しての使用をしばしば見かけます。
GLP-1製剤の副作用は、消化器系に多く出現することが知られていました。しかし、発売以降、インスリン治療からの切り替えによる糖尿病性ケトアシドーシスに高血糖、SU剤との併用による低血糖のほか、急性膵炎や腸閉塞の重大な副作用が相次ぎ、使用上の注意の改訂等が行われるなど注意喚起がされています。当モニターには、リラグルチドでは43件(2件はゾルトファイ配合注)、エキセナチドで31件(7件はビデュリオン)、リキシセナチドで7件(1件はソリクア配合注)、セマグルチドでは9件(8件はリベルサス錠)の報告がありました。やはり消化器症状の吐き気、悪心が多く、比較的軽症の症例が大半を占めました。私たちは、次の副作用モニターを発信しています。

リベルサス錠7mgの基本情報(薬効分類・副作用・添付文書など)

当モニターには、2012年までにリラグルチドで10症例12件、エキセナチドで6症例10件の報告が寄せられています。吐き気・悪心・嘔吐7件、下痢・ 軟便5件、便秘2件、腹部膨満感、食欲低下、体重減少、腹痛が各1件のほか、SU剤との併用での低血糖1件、注射部位反応(紅斑等)2件、発疹1件でした。いずれも中止または減量で症状は軽減・回復しています。
消化器系の副作用は、投与初期や増量時に発現し、数日から数週間で自然に回復する、とされています。1週間以上の間隔をあけて増量するという用法・用量を守ることが大切です。
入院による導入のため、増量の期間が3日ごとと短かったことが要因のひとつと指摘されている症例が3件ありました。また、腹痛や便秘など消化器系副作用の症状は、重大な副作用である急性膵炎や腸閉塞の初期症状の場合もあるので、この点での注意も必要です。発売から2年足らずの新薬ですので、動物実験でみられた甲状腺腫瘍の問題を含め、今後とも注意深くモニターしていく必要があります。

2010年10月までに報告されたシタグリプチンの副作用報告は5例で、腹部膨満、便秘、腹痛、下痢などの胃腸障害が4件、発疹が1件でした。
食後に下部消化管から分泌されるインクレチンは、血糖値に応じたインスリン分泌促進作用、グルカゴン分泌抑制に加え、胃内容物排出抑制、食欲抑制作用など多様な作用を有するため、胃腸障害の副作用が多いと考えられます。
重篤な副作用としてインタビューフォームにも記載されている「低血糖症」が、発売後問題になっています。特にシタグリプチンと他の糖尿病薬との併用療法において注意が必要です。メーカー資料によると、低血糖症の発現率はシタグリプチン単独投与で1.0%、併用療法では、グリメピリドで5.3%、ビオグリタゾンで0.8%、メトホルミンで0.7%、と報告されています。
2010年5月、「インクレチンとSU剤の適正使用に関する委員会」は、SU剤治療中にシタグリプチン追加投与をする場合、SU剤を減量するよう勧告しています。今回副作用報告のあった5例中2例は、グリメピリドに追加処方したものでした。さらに、SU剤では十分な効果が得られない症例に追加処方する場合、SU剤の投与量を減量したとしても十分な観察が必要で、長期投与は避けるほうがよいでしょう。

虚血性腸炎はストレスが原因?治療や食べてはいけないものを医師が解説

通常、GLP-1製剤は胃酸で分解され、腸管からは吸収されないのですが、リベルサス錠は添加物付加と空腹時服用によりこの問題を解決しています。注射に忌避的、あるいは注射手技が難しい患者への新しい選択肢として期待されています。
一方で、新薬モニターに寄せられた調査報告書では消化管から吸収されるとはいえ、吸収率が非常に低く(1%程度)、効果の確実性や安全性に懸念があると指摘されています。また、特殊な用法(起床時服用)によるアドヒアランスの低下、添加物による長期的影響も考慮する必要があります。
今回はリベルサス錠により悪心(おしん)症状を来した症例と、これまでに当副作用モニター情報へ寄せられた副作用報告のまとめを紹介します。

リベルサス錠は、第III相臨床試験において悪心10.8%、嘔吐4.2%、腹部不快感2.4%と、消化管に関連する副作用が多く報告されています。
これまで当副作用モニター情報へは21件の副作用症例が寄せられていますが、その内訳は悪心10件、嘔吐6件、腹痛・下痢・食欲低下・食欲増加・腸炎・めまい・動悸、各1件とやはり消化器症状に関連するものが多く報告されています。
また、副作用出現時期は開始初期または増量のタイミングがほとんどです。
これらの副作用はGLP-1製剤に共通した特徴ですが、リベルサス錠は先にのべたように、他の注射製剤に比べ血中濃度が安定せず、消化器症状が発生しやすくなっている可能性があります。
経口薬としての扱いやすさはありますが、有効性・安全性の面から第一選択は注射製剤とし、それらが使用できない患者への選択肢の一つとして位置づけることが推奨されます。


PIONEER 6:プラセボ比較、心血管アウトカム試験 | 臨床成績

GLP-1 受容体作動薬は血管内皮細胞に直接作用するという実験結果が報告されていること、げっ歯類においてはGLP-1 受容体作動薬は血管平滑筋の増殖を抑制する作用を有するので、ヒトにおいて虚血性腸炎が起きる可能性を否定できません。65 歳以上の患者では有害事象の発現が高い傾向が認められており、報告の5例すべて70歳以上でした。また75歳以上での投与経験が限られていることから高齢者への投与は慎重に行う必要があります。

リベルサス錠7mg(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)錠) ..

注射剤では、週1回型製剤やインスリンとの配合剤も開発されてきています。投与量が増えるにしたがって副作用も増える可能性があります。また、内服薬の登場で使用量は急速に伸びることが予想され、今後も目が離せない薬物群です。

Japanese registration number:JapicCTI-142572

虚血性大腸炎は、何らかの原因で突然、または一過性の血流障害が起きることで大腸に炎症が生じ、血便や腹痛が起こる疾患です。

虚血性腸疾患の中では最も頻度が高く、日々の診療でも虚血性大腸炎の患者さんが多くいらっしゃいます。典型例としては「便秘になりがちな高齢の女性」であり、一般的には60歳以上の方に多いですが、若い方にも増えている病気です。症状が強く、大腸カメラに映る画像にインパクトがあるため、初めて発症した患者さんは重篤な病気ではないかと思われることも多いです。時に手術が必要なこともありますが、ほとんどは一過性の症状です。治療は短期間で終了し、予後は良好とされています。

リベルサス錠 3mg、リベルサス錠 7mg 及びリベルサス錠 14mg の添付文書 ..

大腸に血液を送る役割を担う動脈の血流が阻害され、大腸粘膜に血液が不足することで粘膜傷害を起こします。虚血性大腸炎は、血管の原因と腸管の原因がそれぞれ複雑に絡んで発症すると考えられています。

血管の原因としては、動脈硬化があったり血液が固まりやすい方が挙げられ、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や動脈硬化を引き起こす基礎疾患をもつ方に発症しやすいとされています。

また、腸管の原因として最も頻度が高いのは便秘です。便秘により強くいきんだ際に腹圧がかかり、大腸粘膜への血流が低下してしまいます。症状は突然の腹痛で発症し、粘膜傷害が悪化すると下痢、便器が真っ赤になるほどの血便が生じます。患者さんは血便の量に驚いて救急車で来院することも少なくないですが、輸血が必要になるほどの貧血になることは稀です。

副作用モニター情報<348> シタグリプチンと低血糖

虚血性大腸炎の好発部位は身体の左側の大腸(S状結腸、下行結腸)です。腸管に炎症を生じますので、腹部CT検査を行い、虚血状態の腸管が浮腫んでいる所見が認められれば、急な腹痛後の血便といった特徴的な症状と合わせて、ほぼ診断は確定します。

また、以前は注腸検査で典型的な所見(拇指圧痕像)を確認していましたが、現在は注腸検査はほとんど行わず、大腸カメラによって直接粘膜を観察することが多いです。大腸カメラでは粘膜の発赤、浮腫、びらん、縦走潰瘍を認め、虚血粘膜と正常粘膜の境界は比較的明瞭と言われています。しかし、炎症の活動期のときや、腹部CT検査で腸管が壊死している所見が認められる場合は、大腸カメラの検査をすると穿孔(せんこう:腸に穴が開くこと)のリスクもあり、検査は慎重に行う必要もあります。

副作用モニター情報<597> リベルサス錠による副作用まとめ

SGLT-2阻害薬は、日本では2014年4月のイプラグリフロジン(製品名スーグラ)を皮切りに、6成分が相次いて承認、発売されました。作用機序が新しく、体重減少効果などでも注目されています。発売前から、尿中にグルコースが排泄されるため、尿路・性器感染症の副作用が起きると懸念されていましたが、それだけにとどまらず、死亡例を含め重篤な副作用報告が相次ぎ、日本糖尿病学会が2014年6月に「SGLT-2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表するに至りました。同年8月に再改訂されましたが、その後も副作用報告は続き、2015年1月に厚生労働省が添付文書の改訂を指示し、重大な副作用に、低血糖(特に他剤との併用)、腎盂腎炎および敗血症、脱水、ケトアシドーシス、が追加されました。それでも、尿量の増加と体液量減少による脱水、それに続発する脳梗塞を含む血栓・塞栓症も報告されています。特に高齢者への投与に注意が必要となります。
SGLT-2は、腎臓の近位尿細管でグルコースの再吸収を行うトランスポーターです。同時に、水とナトリウムも移動します。腎機能が正常な場合、SGLT-2阻害剤を作用させると1日当たり約70gのグルコースが尿中に失われることわかっています。腎機能が低下してくると、尿中へのグルコース排泄量が減り、効果は減少します。
SGLT-2は腎臓に存在するだけでなく、他の臓器にも分布しています。膵β細胞のグルコースの取り込みを行っている輸送担体でもあるので、膵β細胞の活動に影響を与えることも考えられます。SGLT-2が人体のどこに存在しているのか全貌はつかみ切れていません。影響を受ける臓器が出てくる可能性に注意が必要でしょう。
製品によって差はありますが、SGLT-2阻害剤は腸における水分の吸収を担っているSGLT-1の阻害作用も併せ持っていますので、腸管における水分吸収能が低下します。よって、脱水時の水分補給を経静脈的に行う必要が出てきます。
成分別に当モニターに寄せられた報告を見てみましょう。イプラグリフロジンでは6例11件、湿疹・痒みなどの皮膚症状が4件と膀胱炎、亀頭炎と尿路系感染症が2件でした。ダパグリフロジンでは8例10件で、低血糖症状1件、陰部カンジダ1件、陰部の痒み2件、発疹1件、頻尿2件、膀胱炎1件でした。トホグリフロジンの1例は、以下の副作用モニターの記事で紹介します。

副作用情報<580> セマグルチドによる虚血性腸炎

大腸への血流が低下することで、大腸での炎症が起こる病気です。腹痛や下痢、出血などの症状を伴います。左側~下腹部にかけての腹痛が特徴的であり、出血の程度がひどい場合には、便器が真赤になるくらいの血便が出ることもあります。
糖尿病や高血圧症、脂質異常症といった基礎疾患のある人に起こりやすい病気です。また、男女比は1:2~3と、女性の発症が目立ちます。

副作用モニター情報<451> アプルウェイによる腎盂腎炎

基本的には予後は良好であり、入院が必要であれば絶食、点滴を数日間続け、腸管を安静にすることで症状は改善します。炎症が強ければ抗生剤を使用する場合もあります。症状が落ち着けば、少量のお粥から食事を開始し、食事形態を徐々に通常に戻していきます。問題がなければ、1週間から2週間程度で退院できます。

しかし、この病気は4人に1人ぐらいの割合で再発しやすいことが特徴であり、退院後は虚血の原因となる便秘や生活習慣病のコントロールをしっかりと行うことも重要です。また、腹部CT検査で大腸が壊死していると判断された場合は、緊急手術が行われる場合もあります。

ほかにも、炎症が強いために腸管が狭くなる(狭窄)こともあり、通過障害をきたす場合は外科的手術加療が必要になりますが、通過障害をきたす症例は稀で、保存的に加療を行える場合がほとんどです。

虚血性腸炎に予兆はありますか?

糖尿病、高血圧症、脂質異常症などに伴う動脈硬化で腸の血流が低下することが主な原因です。これに、便秘による腸管内圧の上昇、ストレスなどの要因が加わることで、発症のリスクが高まります。
また、大腸カメラ(内視鏡)検査の前処置として飲む下剤が原因になることもあります。虚血性腸炎のリスクを下げるためには、生活習慣を改善したり、ストレスを解消したり、便秘の治療を受けることが重要になります。

虚血性腸炎は自然治癒しますか?

掲載する情報は、医療関係者を対象に作成されたもので、一般の方に対する情報提供を目的としたものでないことをご了承ください。
・具体的な相談については、主治医やかかりつけの薬剤師にご相談ください。
・自己判断で服用を中止しないでください。
・治療・処方に関する個別の相談には応じかねます。

虚血性腸炎はほっておくとどうなりますか?

当科では、虚血性大腸炎に関わる臨床研究を行っています。現在、再発性の虚血性大腸炎の予防方法や治療方法を検討した研究の報告はほとんどないため、虚血性大腸炎に対して診療歴のある患者さんの年齢、性別、既往歴、併存疾患、内服歴、病変部位、治療方法などを診療録から抽出し、再発例の特徴を捉え、対策法を探ることを目的としています。現状は症例を集積中ですが、今後研究を進めていくことで虚血性大腸炎の治療に役立てることをめざしています。