3タイプの吐き気にはそれぞれ違った吐き気止めが効果を示します。 ..


5-HT3 受容体拮抗薬は,急性期悪心・嘔吐の予防において重要な制吐薬であり,第1 世代のグラニセトロン,オンダンセトロン,ラモセトロンなどのほか,より半減期が長い第2 世代のパロノセトロンがある。前版までは,対象となる抗がん薬の催吐性リスクや個々の患者のリスク因子に応じて,どちらを選択すべきか,薬価の問題を含め議論が続いていたが,薬価については後発品の登場により両者の差が小さくなった。また,NK1 受容体拮抗薬の登場により,中等度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法も変わってきた。


投与していない別の作用機序をもつ制吐薬(ハロペリドール,メトクロプラミド.

第1 世代の各5-HT3受容体拮抗薬の制吐効果に差はないとされているが,わが国で行われた高度リスクの抗がん薬投与に対する,第2 世代の5-HT3受容体拮抗薬パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群とグラニセトロンとデキサメタゾンの併用群の制吐効果を検討した第III相ランダム化比較試験において,パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群が有意に遅発性嘔吐を抑制したことが示されている(参照)。また,高度リスクの抗がん薬投与に対するパロノセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群と,グラニセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群の制吐効果の比較を行った第III相ランダム化比較試験(TRIPLE 試験)が報告され,主要評価項目ではないがパロノセトロン群が遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示された

このような状況において,中等度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法において,どの5-HT3 受容体拮抗薬を用いるべきか解説する。

ここでは、各種制吐薬の特徴や副作用を、作用機序ごとに紹介します。 国内で承認されている制吐剤の一覧

中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法の課題として,2~3 日目のデキサメタゾンを省略するステロイドスペアリングがあり,複数のランダム化第Ⅲ相比較試験が報告されている(→ 参照)。また近年,高度・中等度催吐性リスク抗がん薬による超遅発期(抗がん薬投与開始6 日目以降)の悪心・嘔吐抑制の必要性が注目されており,抗がん薬投与開始から1 週間程度の長い期間を想定した制吐療法の開発が求められている。近年では,高度催吐性リスク抗がん薬における遅発期の悪心・嘔吐に対して,より長い制吐効果を発揮する選択的NK1 受容体拮抗薬の治療成績が報告されており,中等度催吐性リスク抗がん薬においてもその検証が望まれる。

アントラサイクリン+シクロホスファミド併用(AC)療法においてアプレピタントを使用しない臨床試験のエビデンスから,2 日目以降のデキサメタゾンの上乗せ効果は証明されていない。さらにステロイドの副作用を減ずる目的で,AC 療法に対する2~3 日目のステロイド使用を行わないsteroid sparing という投与法は,ステロイド通常使用に対する非劣性が海外の第III相ランダム化比較試験で示されている。本邦でも,アプレピタント(またはホスアプレピタント)を併用した第III相試験において,AC療法を含む高度リスク抗がん薬に対するsteroid sparing が可能であることが示された14)。ただし使用された5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンのみであることに留意する必要はある。したがって,AC 療法においては,steroid sparing は選択肢の一つとなる(→ 参照)。

デキサメタゾンの3剤を併用する○中等度催吐性リスク薬剤・レジメンへの対処 5 ..

また,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン (12 mg に減量→ 参照)とアプレピタントによる3 剤併用療法も,高度リスクの抗がん薬による急性嘔吐と同様に遅発性嘔吐に対しても推奨されている。

パロノセトロンの予防的制吐効果を検証したランダム化比較試験は多数あり,メタアナリシスも行われている。中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防に関するメタアナリシスの結果,パロノセトロンの制吐効果は第1 世代5-HT3 受容体拮抗薬を上回っていた。また,高度催吐性リスク抗がん薬と比べて,中等度催吐性リスク抗がん薬に対するパロノセトロンの制吐効果は第1 世代よりも明らかに良好であった。このため,中等度催吐性リスク抗がん薬に対してデキサメタゾンに併用する5-HT3 受容体拮抗薬は,パロノセトロンを選択することが強く推奨される。

デキサメタゾン(DEX)の3剤併用標準制吐療法を施行することが推奨 ..

また本邦では,オキサリプラチンを含む治療レジメンを投与する患者413 人に対して,5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下におけるNK1 受容体拮抗薬(アプレピタントまたはホスアプレピタント)の上乗せ効果を検証したランダム化第Ⅲ相比較試験(非盲検)が行われ,NK1 受容体拮抗薬使用群が対照群より全期間,特に遅発期の悪心・嘔吐を有意に抑制することが示された。海外では,中等度催吐性リスク抗がん薬(カルボプラチン53%,オキサリプラチン22%を含む964 人)に対して,5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下におけるホスアプレピタントの上乗せ効果を検証したランダム化第Ⅲ相比較試験が行われ,同様の結果が報告されている。一方,NK1 受容体拮抗薬の追加効果をみたオキサリプラチンに関するメタアナリシスでは否定的なものもある,。高用量カルボプラチン以外の中等度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1 受容体拮抗薬の制吐効果に関するエビデンスは限られるため(→ 参照),ステートメントでは3 剤併用療法の対象をエビデンスのある「催吐性が高いカルボプラチン」と記載した。

近年,中等度催吐性リスク抗がん薬に対して,5-HT3 受容体拮抗薬,デキサメタゾンに加え,NK1 受容体拮抗薬の3 剤を併用することが増えている。高度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1 受容体拮抗薬を含む3 剤併用下におけるパロノセトロンと第1 世代5-HT3 受容体拮抗薬との比較試験では,主要評価項目である120 時間までのCR 割合に有意差がなかったことを考えると,中等度催吐性リスク抗がん薬に対してNK1 受容体拮抗薬を用いる場合には,第1 世代の5-HT3 受容体拮抗薬を選択することも許容される。


これらの結果は、NK1 受容体拮抗薬の作用機序や特徴を考慮すれば妥当な結果である。

ASCO ガイドライン2017 によれば,遅発性嘔吐は,程度としては軽度なものが多いが,急性嘔吐の対処が不十分なときに起こりやすいとされる。治療としては副腎皮質ステロイド(経口デキサメタゾン)が推奨されており,メトクロプラミドや5-HT3受容体拮抗薬とも併用される。しかし,デキサメタゾンに加え5-HT3受容体拮抗薬を併用しても制吐効果の増強は得られない。さらに,急性嘔吐を認めた場合にはこれら2 剤を併用しても効果は不十分であるとされているため,抗がん薬の催吐性リスクや患者の状態に応じていずれか一方の使用にとどめるべきと思われる。

副作用として、吐き気や下痢などの消化器症状が比較的多いため、特に ..

遅発性嘔吐は,抗がん薬投与後24 時間以降に発現するもの,と定義されており,そのコントロールは,患者のQOL 維持,さらに精神的安定や治療に対する意欲の向上のためにも必要不可欠である。薬剤の催吐性リスクを適正に評価し,エビデンスに基づいた制吐薬の適切な使用を検討する必要がある。

作用機序の異なる制吐薬を複数、定時投与する。 ➢ ドパミン受容体拮抗薬 ..

抗がん薬の催吐性リスクの適正評価は重要で,リスクに応じた制吐療法の標準化が必要である。軽度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法のエビデンスは国内外において認められず,NCCN ガイドライン2023 ver. 2 ,MASCC/ESMO ガイドライン2016 ,ASCO ガイドライン2020 においても推奨できるものはないとされ,前版でも推奨できる制吐療法は挙げていなかった。しかし,実臨床では軽度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法は必要と考えられており,患者の状態を評価しながら制吐療法を行うべきである。

それでもどうしても吐き気が強い時には,デキサメタゾン8mgを併用することがあります ..

カルボプラチンは中等度催吐性リスク抗がん薬に分類されるが,高用量(AUC≧4)で投与する場合の催吐割合は60%~90%で,高度催吐性リスク抗がん薬に近い。制吐療法研究16 編のメタアナリシスでは,中等度催吐性リスク抗がん薬のうち,カルボプラチンを含むレジメンに対しては有意にNK1 受容体拮抗薬併用の臨床的有用性があったと報告されており,AUC≧4 のカルボプラチンを投与する際には,高度催吐性リスク抗がん薬に準じてNK1 受容体拮抗薬を含む3 剤併用療法を行うことを推奨する(→ 参照)。なお,NCCN ガイドライン2017 ではAUC≧4 のカルボプラチンを高度催吐性リスク抗がん薬に分類しているが,この境界値4 に関するエビデンスは不明である。

吐き気が起こるメカニズムの1つに、「セロトニンという体内物質(鍵)が、受容体 ..

最小度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法についてはさらにエビデンスが乏しく,予防的制吐療法を推奨するエビデンスはないが,必要時には適切な制吐療法を行う。

このような作用機序は吐き気や嘔吐を抑制する可能性が高いと考えられており、制 ..

中等度催吐性リスク抗がん薬による悪心・嘔吐に対する国内外の制吐療法ガイドライン共通の推奨は,5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2 剤併用療法である。催吐性の高い一部の抗がん薬(AUC≧4 のカルボプラチン等)を投与する場合には,NK1 受容体拮抗薬を加えた3 剤併用療法が推奨される。なお,NK1 受容体拮抗薬を投与する場合には,デキサメタゾンの用量を50%減量する(→ 参照)。

基本的には、手術終了時やその終了直前に制吐剤投与を行いますが、デキサメタゾン ..

軽度催吐性リスク抗がん薬の急性期悪心・嘔吐についての明らかなエビデンスはないものの,実臨床では,デキサメタゾン3.3~6.6 mg 静注(または4~8 mg 経口)の単剤投与,5-HT3 受容体拮抗薬の単剤投与,状況に応じて,ドパミン(D2)受容体拮抗薬の投与が広く行われている。最小度催吐性リスク抗がん薬の急性期の悪心・嘔吐に対する予防的制吐療法は基本的に不要とされている。

本来は吐き気止めではないが、悪心・嘔吐に有効。 しかし、国際標準用量の10mgは ..

中等度催吐性リスク抗がん薬の催吐割合は30%<~90%と定義されている。しかし,カルボプラチン(AUC≧4)のように中等度催吐性リスクに分類されていても高度催吐性リスクに近い催吐割合(60%~90%)の抗がん薬もあるため,推奨される予防的制吐療法を行っても,悪心・嘔吐が十分抑制できないこともある。標準的な制吐療法を行いつつ,患者の状態を考慮し,適切な対応を行うことが必要である。

ガイドラインには、「作用機序の異なる制吐薬を複数、定時投与する。また ..

CHOP 療法も高度催吐性リスクに分類されている。しかし実臨床では制吐薬として2 剤併用が行われる傾向にある。これは高用量のプレドニゾロンを5 日間投与するため遅発性の悪心嘔吐が低いと考えられているためであり,実際に我が国で行われたCINV 観察研究では,79%で2 剤併用が行われていた。CHOP 療法に対するNK1 受容体拮抗薬の有効性については,1 コース目は2 剤併用を行い,2 コース目からNK1 受容体拮抗薬を上乗せする試験が報告されている。また第2 世代の5-HT3受容体拮抗薬の有効性について検討したいくつかの前向き試験が本邦より報告されている 。2 剤併用,3 剤併用のどちらが良いかについてのランダム化比較試験は,第II相試験での報告しかなく,今後の検討が必要である。

デキサメタゾン(オルガドロン注®、デカドロン錠®) 機序は不明です。 ☆オランザピン(ジプレキサ錠®)

5-HT3 受容体拮抗薬の選択においては,3 剤併用療法か4 剤併用療法か,併用する抗がん薬の催吐性リスク,患者リスク因子,患者の希望,初回治療か否か,前治療サイクルにおける悪心・嘔吐発現状況といった要因を考慮することが重要である。特に,デキサメタゾンの投与期間を短縮する場合やオランザピンの追加・併用が困難で3 剤併用療法を行う場合には,第2 世代のパロノセトロンが優先される。

医療用医薬品 : デキサート (デキサート注射液1.65mg 他)

一方,5-HT3 受容体拮抗薬としてパロノセトロンを使用した3 剤併用療法に対してオランザピンの上乗せ効果を検証したプラセボ対照ランダム化比較試験では,オランザピン群はプラセボ群より遅発期のCR 割合を有意に改善した。また,5-HT3 受容体拮抗薬の第1/第2 世代どちらも使用可能であったランダム化比較試験でも同様の結果であった。しかし,4 剤併用療法において,第1 世代と第2 世代の5-HT3 受容体拮抗薬の効果を比較した臨床試験は2023 年8 月時点で存在せず,第1 世代と第2世代の5-HT3 受容体拮抗薬の制吐効果の差は不明である。

ロン,クロルプロマジン,デキサメタゾンの併用は 85%/93%であった。また,ク ..

今回,推奨の根拠となるエビデンスがない制吐療法については,患者の価値観・好みも考慮のうえ,実臨床で行われている制吐療法について記述した(→ 参照)。