グルココルチコイドであるデキサメタゾンは術後の悪心・嘔吐を予防するが,手術部位感染のリスクを上昇させる可能性への懸念がある.
修正 intention-to-treat 集団は 8,725 例(デキサメタゾン群 4,372 例,プラセボ群 4,353 例)であり,そのうち 13.2%(デキサメタゾン群 576 例,プラセボ群 572 例)が糖尿病を有していた.主要解析の対象となった 8,678 例のうち,手術部位感染はデキサメタゾン群の 8.1%(4,350 例中 354 例)とプラセボ群の 9.1%(4,328 例中 394 例)に発生した(糖尿病の有無で補正したリスク差 -0.9 パーセントポイント,95.6%信頼区間 [CI] -2.1~0.3,非劣性の P<0.001).表層切開創,深部切開創,臓器・体腔の部位別,および糖尿病を有する患者における結果は,主要解析の結果と同様であった.術後 24 時間における悪心・嘔吐は,デキサメタゾン群の 42.2%とプラセボ群の 53.9%に発生した(リスク比 0.78,95% CI 0.75~0.82).糖尿病を有しない患者では,高血糖イベントがデキサメタゾン群 3,787 例中 22 例(0.6%)とプラセボ群 3,776 例中 6 例(0.2%)に発生した.
デキサメタゾン酢酸エステル dexamethasone acetate (別名:酢酸デキサメタゾン).
デキサメタゾン(商品名:デカドロンほか)は強力な鎮痛薬であり、かつ制吐薬である。人工膝関節置換術(TKA)後のデキサメタゾン投与の利点は不明であったが、韓国・カトリック大学校議政府聖母病院のIn Jun Koh氏らは無作為化試験にて、ラモセトロン(同:ナゼアほか)単独投与に比べ、ラモセトロン+デキサメタゾンの予防的投与のほうが、創傷合併症のリスクが増加することなく術後嘔吐および疼痛が減少することを明らかにした。Clinical Orthopaedics and Related Research誌オンライン版2013年5月4日号の掲載報告。
本研究の目的は、ラモセトロン+デキサメタゾンの予防的投与がラモセトロン単独投与と比較して、術後悪心・嘔吐(PONV)ならびに術後疼痛を減少させ、TKA後の創傷合併症のリスクを増加させるかどうかを評価することであった。
TKA施行予定患者269例を、手術1時間前にデキサメタゾン10mgを投与し手術直後にラモセトロンを投与する群(Dexa-Ra群、135例)と、ラモセトロン単独投与群(Ra群、134例)に無作為化し、術後0~6時間、6~24時間、24~48時間および48~72時間におけるPONV発生率、悪心の重症度、制吐薬の要求頻度、完全抑制率、疼痛の程度およびオピオイド使用量を調べた。
また、術後少なくとも1年以内に、創傷合併症および人工関節術後感染について評価した。
主な結果は以下のとおり。
・Dexa-Ra群では、術後72時間までのPONV発生率が低かった。また、術後0~6時間における悪心の重症度が低かったが、6~72時間においてはそうではなかった。
・概して制吐薬のレスキュー使用は少なく、完全抑制率はDexa-Ra群で高かった。
・Dexa-Ra群は疼痛の程度が低く、術後6~24時間および全期間を通してオピオイド使用量が少なかった。
・両群間で創傷合併症の頻度に差はなかった。人工関節周囲感染症は各群1例ずつにみられた。
■「デキサメタゾン」関連記事
麻酔法別(局所麻酔、脊髄くも膜下麻酔、全身麻酔)の比較においては早期合併症(尿閉)の予防に関しては局所麻酔が優れるが、晩期合併症は差がない(エビデンスレベルⅡ)。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」54頁より
[PDF] 術後悪心嘔吐に対するデキサメタゾン予防投与は有効か
術後の創部の合併症に関して全身麻酔、局所麻酔には差がない。
術後の呼吸抑制は全身麻酔が脊髄くも膜下麻酔、局所麻酔に比較し有意に多いが、呼吸器合併症の発生頻度に差がない。
デキサメタゾン+ハロペリドールorドラセトロン,デキサメタゾン+オンダンセトロン+ドロペリドール,
術後の悪心(嘔気)・嘔吐(以後PONV)は一般的に20-40%の割合で発症し、患者さんが術後に最も避けたい麻酔合併症の一つとも言われています1)。またPONVは患者さんが苦痛なだけでなく、経口摂取を困難にするため術後回復力強化(ERAS:Enhanced Recovery After Surgery)の観点からも重要ですので予防的な介入が望まれます。
ALOHA外科クリニックの選択する麻酔はTAPPであれば全身麻酔(もちろん局所麻酔併用)、Lichtenstein法であれば局所麻酔 であり、いたってシンプルです。
合は、オンダンセトロンやデキサメタゾンを予防的に投与し、もし PONV が生じた ..
全身麻酔の合併症で日帰り手術を達成できない原因の一番は 術後悪心・嘔吐(PONV:post operative nausea & vomittingと言います)です。
術後の(PONV)は30%以上の患者に認められ1,2)、手術の種類によりリスクは異なるものの、システマティックレビューでは腹腔鏡下手術と手術時間の延長が独立した予測因子であることが報告されている3)。消化管疾患患者の多くは入院時に栄養不良を認め4)、PONVは回復および退院の遅延につながるため、PONV予防は非常に重要である。
[PDF] 2021 年 7 月 31 日の間に 附属病院にて全身麻酔手術を受けられた方
PONVの発生頻度は25~30%であるため、手術を受けるすべての患者に予防策を講じることは、医療経済的側面からも好ましくありません。
―PONV(悪心嘔吐)予防に有効なデキサメタゾンの用量についての後ろ向き研究」へのご協
最新のガイドライン2)ではPONVリスク因子が一つでもあれば、予防的に制吐剤投与を行うことが推奨されています。制吐剤は作用経路の異なる複数剤を組み合わせて予防投与することが効果的です。また術中麻酔管理として、吸入麻酔を避けたり、術中・術後のオピオイド使用量を減らすなどリスクの低減が検討されます。日本で予防投与される一般的な薬剤(静注薬)を表2に示します。海外でPONV予防・治療薬のゴールデンスタンダードだった5-HT3受容体拮抗薬ですが、2021年に日本でも保険適応となっています。
[PPT] デキサメタゾン静脈内投与の鎮痛効果 帝王切開後疼痛に対する
表2 PONV予防薬(日本で投与される一般的な薬剤名と推奨投与量の例)
PONV 予防のデキサメタゾン:無作為対照試験のメタ分析最新版
実用的国際共同非劣性試験で,手術時間が 2 時間以上,術後 1 晩以上の入院が予定されている,皮膚切開長が 5 cm を超える緊急性の低い非心臓手術を受ける成人患者 8,880 例を,麻酔下でデキサメタゾン 8 mg の静脈内投与を行う群と,マッチさせたプラセボの投与を行う群に無作為に割り付けた.無作為化は,糖尿病の有無と試験施設で層別化して行った.主要転帰は術後 30 日以内の手術部位感染とした.非劣性マージンは 2.0 パーセントポイントと事前に設定した.
PONV 予防のデキサメタゾン:無作為対照試験のメタ分析最新版 ..
しかし、リスクの高い患者には予防策を講じることが推奨されています。前述したApfelの4大リスク因子の数によってリスク分類し、リスクに応じた対策を行います()。
PONV対策は、制吐剤の投与の他にも様々な対策に効果が期待されてい ..
* PONV を起こしにくい麻酔方法
・吸入麻酔薬を使用せずプロポフォールによる全静脈麻酔(TIVA)を行う
当院で全身麻酔を受ける患者さんのうち、術後に吐き気や嘔吐をおこす可能性が高いと考えられる方
PONV に使用できる制吐薬
欧米ではであるデキサメタゾン(デカドロン)の使用が推奨されています、わが国ではPONV に 保険適応がありません。日本でも使用できる主な薬剤は、 オンダンセトロン塩酸塩水和物 、ドロぺリドール(ドロレプタン® )、プロクロルペラジン(ノバミン® )、 メトクロプラミドメシル塩酸塩(プリンペラン® )などであります。
PONVは、毎年全身麻酔を受ける人口の約10%が罹患するとされる。PONVは不快で ..
Dexamethasoneは強力な副腎皮質ステロイドであり、4,000例以上を対象にした臨床試験においてPONVの発現頻度を減少させたが5)、本試験で腸管手術を受けた患者は僅かであった。一方、腸管手術を受けた計100例を対象にした2つの単一施設による臨床試験では、Dexamethasoneによるベネフィットを認めなかった6,7)。ステロイドの長期使用には創感染や縫合不全などのリスクがあるが、単回投与ではリスクが増加しないと考えられ、甲状腺手術を受けた患者のメタアナリシスでは8~10mgがPONV抑制に最も効果的であったことが報告されている8)。また、Dexamethasoneは手術による炎症を軽減する可能性があることから、術前投与が最も効果的であると考えられた9)。そこで、腸管手術を受ける患者に対するDexamethasoneのPONV抑制効果を検討する盲検下多施設無作為化比較試験、DREAMS試験が行われた。
[PDF] 副腎皮質ホルモン剤 デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液
基本的には、手術終了時やその終了直前に制吐剤投与を行いますが、デキサメタゾンは効果発現まで2時間 要するため麻酔導入時の投与が推奨されています。最新のガイドライン2)では、表1の6因子のうち1-2因子該当する場合は表3から2剤、3因子以上該当する場合は3-4剤の予防投与が推奨されています。当院では、表1のリスク因子が1-2因子該当する場合、表2から2種類(例:オンダンセトロン&デキサメタゾンやデキサメタゾン&プロポフォール麻酔)、3因子で3種類、4因子以上で4種類(オンダンセトロン、デキサメタゾン、ドロペリドール、プロポフォール)の薬剤を予防投与しています。
デキサメタゾン (250 mcg/kg) + オンダンセトロン (150 mcg/kg)。 調査の概要. 状態. 完了. 条件.
事前に投与された制吐剤とは別の作用経路の制吐剤を投与することが推奨されています。例えば手術室でオンダンセトロンが投与されている場合はドロペリドールを投与する、デキサメタゾンとドロペリドールが既に投与済みならオンダンセトロンを投与するなどです。他に投与可能な薬剤がなく前回投与から6時間経過していれば5-HT3:セロトニン受容体拮抗薬(オンダンセトロン4mg、グラニセトロン1mg)の2回目の投与も考慮されます。
• デキサメタゾンは血糖上昇や不眠、骨量低下等の副作用を有する
また術後病棟でPONVが起きた場合は、麻酔による影響以外にも他の原因検索をすることは重要です。過剰なオピオイド投与(鎮痛評価によりIV-PCA投与量の減量、硬膜外PCA薬液をオピオイドなしに変更するなど対応検討)や機械的な腸閉塞がないか、咽頭の血液や喀痰の貯留などがないかを確認しましょう。
[PDF] <本体1> アロキシ 1V デキサメタゾン 9.9mg ポララミン注
主要評価項目は術後24時間以内の嘔吐、副次評価項目は術後の嘔吐回数(5分間の間隔で別エピソードと定義)、術後制吐薬の使用、PONVの重症度、疲労、経口摂取までの期間、入院期間、健康関連QOLであった。大規模臨床試験の結果5)に基づき、Dexamethasoneにより術後24時間以内のの発現頻度が37%から28%に減少すると仮定し、両側α=0.05、検出力80%で必要症例数は950例であった。なお、その後、予定以上の集積を認めたことから検出力を90%とし、最終必要症例数は1,320例とされた。
術後の悪心/嘔吐に対するDexamethasone(DREAMS試験)
主要評価項目である術後24時間以内のの発現率は、標準的ケア群33.2%、Dexamethasone群25.5%であり、Dexamethasoneで有意な低下を認めた(Risk rate=0.77, 95% CI: 0.65-0.92, p=0.003)。術後24時間以内のを発現した395例中251例(63.5%)は治療医および患者双方によりエピソードが記録され、119例(30.1%)は患者のみ、25例(6.3%)は治療医のみの記録であったが、Dexamethasoneによる治療効果は、治療医のみの記録、患者のみの記録でも同様であった。なお、術後25~72時間のは両群に有意差を認めず(Risk rate=0.90, p=0.14)、術後73~120時間では両群で同程度であった(Risk rate=1.02, p=0.87)。術後24時間以内のにおけるサブグループ解析では、手術の種類、術後回復力強化プログラム(ERAS)施行の有無、喫煙状況、ASA grade、術後疼痛緩和の方法、性別のいずれにおいても有意差を認めなかった。
vomiting:PONV)があげられる.現在用いられている揮発性麻酔薬では,およそ20 ..
がん薬物療法を行う医療者のstate-of-the-art は,最適な治療方針のもとに適切な薬物療法を選択し,安全に,苦痛と後遺症を最小限にしながら,治療強度を維持して最大限の効果を導くことである。各がん種における治療ガイドラインが整備され,Cancer Board も充実してきたことで,適切な薬物療法の選択が容易になされるようになった。さらに各施設内では薬物療法のレジメンを登録制にして管理するようになり,電子カルテの普及による自動計算も導入され,処方に至るまでは一般化され安全性も担保されてきている。しかし,投与後の反応には個体差があり,副作用として出現する苦痛に対してはさらに個別の対応になるため,各種支持療法は熟知しておく必要がある。がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting; CINV)は,催吐の機序が解明され,そこに作用する薬剤が開発された現状においても,患者が苦痛と感じる代表的な副作用であるため,これを適切に制御することは重要な意味をもつ。わが国では,海外のガイドラインを参考に,現状に即したガイドラインを作成し,評価も行なってきた, 。の登場や新たな制吐に関するエビデンスの新出があり,これらを含めた制吐薬適正使用ガイドライン2015 年10 月(第2 版)一部改訂版(ver.2.2)の公開に至った。