レクサプロが妊活に及ぼす影響はありますか?(体外受精の妊娠 ..


ヒトでの研究
2007年、TanrikutとSchlegelは、うつ病の診断でSSRIを服用していた2人の患者における乏精子症、運動障害、形態異常の症例について報告しました。その後、SSRI内服中は精液所見が悪く中断後に改善した症例が複数例報告されました。
① パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル®)
(Tanrikut C, et al. Fertil. Steril. 2010)
Tanrikutらが行ったベースラインの精液所見およびDNA断片化率(TUNEL法)を35人の健康男性ボランティア(平均年齢34歳、範囲19~58歳)において、精液パラメータおよびDNA断片化に対するパロキセチン塩酸塩水和物(パキシル®)の効果を調べた前向き研究を行いました。ました。試験参加者(平均年齢34歳、範囲19~58歳)には、パキシルが5週間投与し、治療前と1ヶ月のウォッシュアウト期間後を比較検討しました。
精子DNA断片化の有意な増加と関連し、介入前14%から介入後30%に増加しました。精子DNA断片化率が30%以上の男性は、介入前10%でしたが介入後には50%に増加した(OR: 9、95%CI: 2.3-38)。他の精液所見では差は認めませんでした。
② セルトラリン塩酸塩(ジェイゾロフト®)
(Akasheh G, et al. Urology 2014)
早漏患者60名を対象とした報告です。セルトラリン塩酸塩(ジェイゾロフト®)または非薬理学的行動療法で治療された群を比較しました。ジェイゾロフト群には、 25 mg/日を1週間、その後50 mg/日を3ヶ月間投与しました。精子濃度および正常形態率ともに低下、DNA断片化(精子クロマチン分散法)は増加しました(31% vs. 16%)。
③エスシタロプラムシュウ酸塩(レクサプロ®)
(Koyuncu H, et al. Int. J. Impot. Res. 2011)
早漏患者25名を対象とした報告です。レクサプロ®3ヶ月間内服した後、精子濃度(2640万 /mL vs 6890万/mL)、運動率(23.4% vs 58.2%)および正常形態率(23.4 % vs 58.2% )の減少を認めました。
④ SSRI全般での研究
(Safarinejad MR. J. Urol. 2008)
SSRI服用者74名と健常者44名の精液所見および精子DNA断片化(精子クロマチン分散法)を比較した横断研究です。SSRI服用者は、精子数、運動率、正常形態率が有意に低く、精子DNA断片化率も高くなりました。抗うつ薬の使用期間(6-12ヵ月 vs. 1-2年)が長い方が悪影響を及ぼしていました。
ただし、なによりうつ症状が安定していることが大事です。
薬の急な中止や減量はうつ症状の悪化を招く恐れもあるため、心療内科・精神科の医師と相談の上、慎重に決定が必要です。自己判断での薬の中断は決して行わないでください。


(レクサプロ錠:2011年4月22日承認、申請資料概要2.6.2.2.1)

当院に通院されている妊娠・出産・授乳をご経験された方の協力により、治療経過についてご紹介させていただきます。この場を借りてご協力いただいた方に感謝の意を述べたいと思います。体験談をご紹介したのは、治療と向き合いながらも妊娠や出産、授乳などに不安を感じている女性が多いと感じており、これから妊娠を考えているの支えになればと思いアンケートをとらせていただきました。こちらにご紹介している体験談は、薬物療法の安全性について保証するものではありません。治療と妊娠は各々のケースで判断が異なるため、どう判断するかは主治医とご相談ください。

【Aさん 30歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:デプロメール25mg5ヶ月
妊娠中の経過:2ヶ月目で相談の上で服薬中断、9ヶ月目にパニック発作で入院
出生児体重:2585g
Apgar score:10
授乳時薬剤:服薬中断、母乳栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Bさん 29歳】
診断名:うつ病
妊娠時薬剤:ジェイゾロフト100mg4ヶ月
妊娠中の経過:2ヶ月目で相談の上で服薬中断、症状の変化なし
出生児体重:2996g
Apgar score:母子手帳に未記載
授乳時薬剤:出産後5ヶ月目に再発し服薬再開、人工乳に変更
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Cさん 27歳】
診断名:月経前不快気分障害
妊娠時薬剤:妊娠希望のため事前より中断
妊娠中の経過:8ヶ月目に切迫早産のために入院、ウテメリンで動悸が悪化
出生児体重:3106g
Apgar score:10
授乳時薬剤:服薬中断
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Dさん 34歳】
診断名:双極性障害
妊娠時薬剤:リーマス600mg、バルネチール300mg、アナフラニール30mg、ヒルナミン25mg、ベンザリン10mg10年
妊娠中の経過:2ヶ月目に相談、ジプレキサ5mg、レボトミン25mg、ヒルスカミン10mgに
変薬、症状の変化なし
出生児体重:3310g
Apgar score:7
授乳時薬剤:出産後も服薬継続、混合栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Eさん 35歳】
診断名:うつ病
妊娠時薬剤:ジェイゾロフト100mg、デパス1.5mg18ヶ月
妊娠中の経過:妊娠判明時に相談の上でデパスのみ服用、6ヶ月目にジェイゾロフト50mg再開
出生児体重:2732g
Apgar score:8→9
授乳時薬剤:混合栄養、出産後1ヶ月でジェイゾロフト100mgまで増量
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Fさん 35歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:ジェイゾロフト100mg、メイラックス2mg18ヶ月
妊娠中の経過:1ヶ月目に相談の上でジェイゾロフト50mg、メイラックス1mgに減量。
気分が不安定となり4ヶ月目に切迫早産で入院、ウテメリンで動悸が悪化
出生児体重:2814g
Apgar score:8→9
授乳時薬剤:出産後5ヶ月目でジェイゾロフト100mgまで増量、混合栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Gさん 32歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:パキシル5mg、メイラックス1mg2ヶ月
妊娠中の経過:2ヶ月目に相談の上で服薬中断、1回意識消失発作あり。
妊娠中毒症のため帝王切開
出生児体重:3400g
Apgar score:9
授乳時薬剤:服薬中断、母乳栄養
授乳中の経過:乳児は問題なし、母は夜間の不安、イライラ、不眠が出現

【Hさん 35歳】
診断名:パニック障害、強迫性障害
妊娠時薬剤:デプロメール50mg、メイラックス2mg4年半
妊娠中の経過:2ヶ月目に相談の上でデプロメール中止。
7ヶ月目に切迫早産にてウテメリン開始し、7・8・9ヶ月目にパニック発作
出生児体重:3182g
Apgar score:9
授乳時薬剤:出産後に服薬再開、人工栄養
授乳中の経過:乳児は問題なし、母は不眠、抑うつ気分が出現

【Iさん 28歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:セパゾン2mg、ソラナックス0.4mg頓用5年
妊娠中の経過:3ヶ月目に相談の上で服薬継続。パニック発作、抑うつ、イライラが持続
出生児体重:3408g
Apgar score:9
授乳時薬剤:1ヶ月のみ服薬中断し母乳栄養、2ヶ月目以降に人工栄養に切り替え服薬再開
授乳中の経過:乳児は問題なし、母は抑うつ状態が悪化

【Jさん 28歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:当帰芍薬散、桂枝茯苓丸を2年
妊娠中の経過:妊娠判明時に服薬中断、逆子のため3週早く帝王切開
出生児体重:2400g
Apgar score:母子手帳に未記載
授乳時薬剤:服薬中断、母乳栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Kさん 28歳】
診断名:統合失調症
妊娠時薬剤:ジプレキサを5年
妊娠中の経過:2ヶ月目に相談の上で服薬中断、3ヶ月目に不眠のため服薬再開
出生児体重:3320g
Apgar score:母子手帳に未記載
授乳時薬剤:服薬継続、混合栄養(母乳中心)
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Lさん 28歳】
診断名:混合性不安障害
妊娠時薬剤:ジェイゾロフト50mg、デパス0.5mgを2年→中断
妊娠中の経過:母子ともに問題なし
出生児体重:2868g
Apgar score:8→9
授乳時薬剤:1ヶ月後より服薬再開、母乳栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【Mさん 33歳】
診断名:混合性不安障害
妊娠時薬剤:メイラックス2mgを8年
妊娠中の経過:2ヶ月目に産科医と相談の上で服薬中断、6ヶ月目にお腹の張りでウテメリン使用
出生児体重:3210g
Apgar score:9
授乳時薬剤:不調時にデパス0.5mg服用しながら母乳栄養、搾乳や授乳後服薬で対応
授乳中の経過:乳児は問題なし、母は4ヶ月目に頭痛、のどの閉塞感が悪化

【Nさん 43歳】
診断名:うつ病
妊娠時薬剤:パキシル40mgを1年8ヶ月
妊娠中の経過:2ヶ月目に相談の上で減量し服薬中断、5ヶ月目に抑うつ状態悪化するが経過観察
出生児体重:3046g
Apgar score:母子手帳に未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:服薬中断、6ヶ月目まで母乳栄養→混合栄養に変更
授乳中の経過:乳児は問題なし、母は8ヶ月目にうつ病再燃

【Oさん 29歳】
診断名:身体化障害
妊娠時薬剤:デパス2mg、フルボキサミン50mgを1年10ヶ月
妊娠中の経過:2ヶ月目相談の上でフルボキサミンのみ中断、デパス0.75mgのみ服用
出生児体重:3454g
Apgar score:8→9
授乳時薬剤:服薬中断、母乳栄養
授乳中の経過:乳児は問題なし、母は4ヶ月目に動悸や胸部絞約感、頭痛などが再燃し
デパス再開

【Pさん 32歳】
診断名:月経前不快気分障害
妊娠時薬剤:ソラナックス0.4~0.8mg、サイレース1mg
妊娠中の経過:2ヶ月目に相談の上でソラナックス0.4mgのみ服用、8ヶ月目にサイレース再開
2ヶ月目に切迫流産となり安静+張り止めを服用
出生児体重:2882g
Apgar score:母子手帳に未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:出産前に相談の上で妊娠中と同じ薬剤を服用、母乳栄養
授乳中の経過:母親は不眠が継続、乳児はやや傾眠?成長発達の遅れなし

【Qさん 33歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:フルボキサミン25mgを3年半
妊娠中の経過:妊娠5週目で相談の上で服薬中断、妊娠経過中は問題なし
出生児体重:3720g
Apgar score:9
授乳時薬剤:服薬中断を継続、母乳栄養
授乳中の経過:母親は貧血、不安が再燃するも産後6ヶ月まで服薬には至らず。乳児は問題なし

【Rさん 35歳】
診断名:うつ病、パニック障害
妊娠時薬剤:リフレックス15mg、メイラックス1mg
妊娠中の経過:2ヶ月目相談の上で服薬中断、妊娠経過中は問題なし
出生児体重:3038g
Apgar score:8→9
授乳時薬剤:服薬中断を継続、母乳栄養
授乳中の経過:母親は精神症状悪化のためリフレックス30mg再開、乳児は問題なし

【Sさん 33歳】
診断名:強迫性障害
妊娠時薬剤:妊娠前に自己判断で服薬中断
妊娠中の経過:5ヶ月目に相談の上で服薬中断を継続したが、精神症状は悪化
出生児体重:2892g
Apgar score:母子手帳に未記載
授乳時薬剤:産後3ヶ月目から服薬再開、混合栄養
授乳中の経過:乳児は問題なし、母親は産後4ヶ月でジェイゾロフト100mgにて精神症状改善

【Tさん 31歳】
診断名:不安抑うつ障害
妊娠時薬剤:フルボキサミン75mg、セニラン4mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で妊娠1ヶ月目で減薬、2ヶ月目に中断。妊娠経過中は問題なし
出生児体重:3140g
Apgar score:母子手帳に未記載
授乳時薬剤:服薬中断を継続、母乳栄養
授乳中の経過:母親は精神症状は安定していたが10ヶ月目に悪化。乳児は問題なし

【Uさん 35歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:フルボキサミン50mg→中断
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で妊娠前に中断。妊娠経過中は問題なし
出生児体重:3700g
Apgar score:9
授乳時薬剤:服薬中断を継続、母乳栄養
授乳中の経過:母親は不安症状が徐々に悪化、18ヶ月目卒乳時に服薬再開。乳児は問題なし

【Vさん 32歳】
診断名:強迫性障害
妊娠時薬剤:セルトラリン100mg→中断
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で中断したが、精神症状悪化のためセルトラリン50mgを継続
し妊娠。その後は妊娠経過中は問題なし。帝王切開
出生児体重:3252g
Apgar score:母子手帳に未記載、気胸のためNICU
授乳時薬剤:セルトラリン50mgを継続、人工栄養
授乳中の経過:母親は強迫症状悪化のため6ヶ月目に増薬。乳児は問題なし

【Wさん 37歳】
診断名:双極性障害
妊娠時薬剤:エビリファイ12mg→中断
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で中断したが、症状悪化のためエビリファイ6mg服用し妊娠後
中断。経過中は気分変動が時折みられたが、ソラナックス0.4mgを頓用で対応
出生児体重:3160g
Apgar score:不明
授乳時薬剤:服薬中断を継続。当初母乳栄養であったが、母乳量のため混合栄養に
授乳中の経過:母親は焦燥感が悪化し服薬再開。乳児は問題なし

【Xさん 32歳】
診断名:統合失調症
妊娠時薬剤:エビリファイ12mg
妊娠中の経過:自己判断でエビリファイ12mgを継続し、切迫流産のため6ヶ月目に服薬中断し
休職。その後の妊娠経過中は問題なし
出生児体重:2784g
Apgar score:不明
授乳時薬剤:早期にエビリファイ12mgを再開、人工栄養
授乳中の経過:母親は一時焦燥感が悪化。乳児は問題なし

【Yさん 33歳】
診断名:強迫性障害
妊娠時薬剤:レクサプロ20mg→中断
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で中断。妊娠経過中に症状悪化のためレクサプロ10mg再開
し出産。出血や切迫流産のため自宅安静
出生児体重:3314g
Apgar score:母子手帳に未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:服薬中断、母乳栄養
授乳中の経過:母親は6ヶ月目に強迫症状悪化し服薬再開。乳児は問題なし

【Zさん 28歳】
診断名:うつ病
妊娠時薬剤:レスリン50mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で減薬し、妊娠判明時に中断。
ソラナックス0.4mgを頓用し対応。妊娠経過中は問題なし。逆子のため帝王切開
出生児体重:2528g
Apgar score:母子手帳に未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:ソラナックス0.4mg頓用のみ継続、母乳栄養
授乳中の経過:母子共に問題なし

【αさん 34歳】
診断名:身体化障害
妊娠時薬剤:ロフラゼプ1mg→中断
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で服薬中断。ソラナックス0.2mgのみ頓用し
妊娠経過中は問題なし
出生児体重:2530g
Apgar score:不明
授乳時薬剤:ソラナックス0.2mg頓用のみ継続、混合栄養
授乳中の経過:母親は2ヶ月目より身体症状が悪化しレクサプロ5mg開始。乳児は問題なし

【βさん 25歳】
診断名:気分変調症
妊娠時薬剤:サインバルタ30mg→中断、リフレックス15mgのみ継続
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で妊娠判明時にリフレックス中断
3ヶ月目に不眠のためブロチゾラム0.25mg開始
7ヶ月目切迫流産、8ヶ月目に精神症状悪化のためミルタザピン15mg開始
出生児体重:3016g
Apgar score:10
授乳時薬剤:産前のミルタザピン15mg継続し2ヶ月目にサインバルタ20mg加剤、母乳栄養
授乳中の経過:母親は精神症状が不安定持続のため治療方針見直し、乳児は問題なし

【γさん 29歳】
診断名:混合性不安障害
妊娠時薬剤:パロキセチン20mgから10mgに減量し継続
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で判明時に服薬中断、不安症状は持続
4ヶ月目よりパロキセチン10mg再開後も不安症状は持続、帝王切開
出生児体重:3758g
Apgar score:母子手帳に未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:パロキセチン10mg継続し混合栄養であったが、6ヶ月目に症状増悪のため
パロキセチン30mgに増量、同時期に人工栄養に切り替え
授乳中の経過:6ヶ月目に薬剤調整後は母親は精神症状改善、乳児は問題なし

【δさん 35歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:妊娠前に相談の上でパロキセチン30mgを1年以上かけて中断
妊娠中の経過:妊娠経過中は問題なし
分娩時に出血過多、自然分娩
出生児体重:3008g
Apgar score:不明
授乳時薬剤:服薬中断を継続、1ヶ月目より母乳栄養から人工栄養に切り替え
授乳中の経過:母親は1ヶ月目より不安症状が再燃し7ヶ月目より服薬再開、乳児は問題なし

【εさん 30歳】
診断名:パニック障害
妊娠時薬剤:セルトラリン50mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で判明時に服薬中断
不安発作を繰り返したが服薬中断継続、自然分娩
出生児体重:2768g
Apgar score:不明(仮死なし)
授乳時薬剤:1ヶ月目よりセルトラリン50mg再開
母乳栄養であったが産科医と相談の上で混合栄養に切り替え
授乳中の経過:母親は不安症状のため薬剤調整、乳児は問題なし

【ζさん 37歳】
診断名:統合失調症
妊娠時薬剤:アリピプラゾール9mg、セパゾン1mg、ブロチゾラム0.25mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で減薬せずに服薬継続
精神状態は安定していたが、胎児の心拍低下のため緊急帝王切開
出生児体重:2926g
Apgar score:1→8→10 羊水が肺にあったためNICUに1週間入院
授乳時薬剤:妊娠時薬剤を継続
母乳量が少なかったため人工栄養に切り替え
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【ηさん 33歳】
診断名:混合性不安抑うつ障害
妊娠時薬剤:ミルタザピン45mg、クエチアピン25mg、ブロマゼパム2mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で判明時にミルタザピンを30mgに減量、経過中に中止
不安症状に対しブロマゼパムを頓用、切迫早産で2ヶ月入院、自然分娩
出生児体重:2926g
Apgar score:8→9 新生児の呼吸が弱かったため酸素投与、保育器を1日使用
授乳時薬剤:産後は服薬と通院を中断、母乳栄養
授乳中の経過:母親は10ヶ月後に症状再燃し治療再開、乳児は問題なし

【θさん 32歳】
診断名:混合性不安抑うつ障害
妊娠時薬剤:ソラナックス0.4mg、ロラメット1mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上でロラメットのみ継続、精神状態は安定
不安症状に対してソラナックスを頓用、切迫早産にて帝王切開
出生児体重:2348g
Apgar score:未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:妊娠時薬剤を継続、混合栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【ιさん 28歳】
診断名:気分変調症
妊娠時薬剤:レクサプロ20mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上でレクサプロを10mgに減量、判明時に服薬中断
症状再燃のため7ヶ月目よりレクサプロ10mg再開し症状改善
切迫早産のため1ヶ月半入院、自然分娩
出生児体重:2950g
Apgar score:未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:レクサプロ10mgを継続、混合栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【κさん 37歳】
診断名:強迫性障害
妊娠時薬剤:セルトラリン100mg、アリピプラゾール3mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で減薬せずに服薬継続
精神症状は持続するものの精神状態は安定、自然分娩
出生児体重:2580g
Apgar score:未記載、呼吸障害と筋緊張異常のため転院し13日間入院
産科医から薬剤の関与を指摘された
授乳時薬剤:妊娠時薬剤を継続、人工栄養
授乳中の経過:母子ともに問題なし

【λさん 29歳】
診断名:双極性障害
妊娠時薬剤:デパケンR800mg
妊娠中の経過:予定外の妊娠であり、自己判断で2ヶ月目に服薬中断
焦燥が持続するものの服薬中断を継続、
張り止めのリトドリンで動悸、息切れの副作用
切迫早産のため短期入院、自然分娩
出生児体重:3520g
Apgar score:8→9
授乳時薬剤:人工栄養、精神症状のため2ヶ月目からアリピプラゾール6mg開始
授乳中の経過:乳児は問題なし、母親は出産直後より抑うつ症状が増悪

【μさん 25歳】
診断名:気分変調症
妊娠時薬剤:なし
妊娠中の経過:不妊治療開始後に受診し、相談の上で妊娠初期の薬物療法は行わなかった
経過中の精神状態は安定
産後の変調に備え、予定日2ヶ月前よりセルトラリン25mg開始
切迫早産のため入院、自然分娩
出生児体重:2678g
Apgar score:5→9
授乳時薬剤:セルトラリン25mgを継続、母乳栄養
授乳中の経過:母親の授乳時不快感があるものの、母子ともに問題なし

【νさん 30歳】
診断名:全般性不安障害
妊娠時薬剤:セルトラリン50mg
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上で減薬せずに服薬継続
判明時に予定通り25mgに減薬し服薬継続
経過中の精神状態は安定、後期に切迫気味、自然分娩
出生児体重:3440g
Apgar score:未記載(仮死なし)
授乳時薬剤:セルトラリン25mgを継続、混合栄養
授乳中の経過:乳児は問題なし、母親は産後2週目で不安症状再燃したため自己判断で増薬
混合栄養から人工栄養に変更、精神症状は徐々に改善

【ξさん 37歳】
診断名:気分変調症
妊娠時薬剤:なし
妊娠中の経過:妊娠前に相談の上でエスシタロプラム10mgを減量、不妊治療開始時に中止
抑うつ・不安症状が再燃、産後の変調に備え予定日2ヶ月前より服薬再開
多胎のため早期入院
出生児体重:1人目2728g 2人目2208g
Apgar score:1人目7 2人目8
授乳時薬剤:エスシタロプラム10mgを継続、人工栄養
授乳中の経過:乳児は問題なし
母親は抑うつ症状増悪のため、4ヶ月目に増薬し精神症状は徐々に改善

抗うつ剤は妊娠にどう影響するのでしょうか?飲みながら妊娠するときは何に注意したらいいのでしょうか?

響-(レクサプロ錠:2011 年 4 月 22 日承認、申請資料概要 2.7.2.3)

これまで研究において、妊娠中の母親の抗うつ薬使用が、子供の自閉スペクトラム症(ASD:autism spectrum disorder)のリスクを高めるかを調査したが、その結果は矛盾していた。米国・マウントサイナイ医科大学のA. Viktorin氏らは、妊娠中の抗うつ薬治療による子供のASDリスクについて検討を行った。Psychological medicine誌オンライン版2017年5月22日号の報告。

2006、07年に誕生した子供179例の集団ベースコホートを対象に、子供たちが7、8歳となる2014年までフォローを行った。Cox回帰を用いて、妊娠中に抗うつ薬に曝露された子供におけるASDの相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を推定し、また特定の9種の抗うつ薬についての分析も行った。解析では、潜在的な交絡因子の調整を行い、全サンプルとうつ病または不安症の診断を有する母親の臨床的に適切なサブサンプルにおいて実施した。

主な結果は以下のとおり。

・妊娠中に抗うつ薬を使用した母親の子供におけるASDの調整RRは1.23(95%CI:0.96~1.57)、うつ病または不安症の診断歴のある女性で1.07(95%CI:0.80~1.43)であった。
・特定の抗うつ薬の分析では、citalopramおよびエスシタロプラム(RR:1.47、95%CI:0.92~2.35)と、クロミプラミン(RR:2.86、95%CI:1.04~7.82)においては、子供のASDのRRが増加した。

著者らは「妊娠中の抗うつ薬使用は、子供のASDリスク増加と関連があるとは考えられない。代わりにこの結果は、精神障害への感受性に関連する要因によって説明されることを示唆している。これらの知見に基づき、子供のASDリスクのために一般的に使用されている妊婦に対する抗うつ薬治療を控える必要はない」としている。

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妊娠の終わりに抗うつ剤を飲んでいると、産後の赤ちゃんから急激にお薬が抜けていくことで、が起こることがあります。

【レクサプロの詳細な妊娠時の危険性情報は以下の通りです(医薬品添付文書より)】

さて、妊娠中に用いた薬の胎児に及ぼす影響は、大きく三つに分けると次の 1.妊娠初期 2.胎児発育期 3.周産期(分娩前後約2週間の時期)になります。

妊娠初期における薬の使用で、一番の問題になるのは形態異常です。この期間に不注意に胎児の器官を作る際に影響を及ぼす薬を用いると、きわめてまれですが形態異常が起こることがあります。
薬が胎児に最も影響を与えやすいのは、妊娠4か月までで、特に2~3か月までに胎児の重要な各器官はつくられます。
受精してから子宮に着床する前後(排卵後2週間)の受精卵ないし胎芽は比較的抵抗力があり、外からの影響はあまり受けないと言われています。
ただ、この時期に何かの障害を受けた場合にはその障害が大きいと受精卵・胎芽は死んでしまい流産すると言われます。
なお、胎芽とは妊娠20日までの妊卵の状態をいいます。

受精後器官形成期の胎芽が薬の影響を受けた場合、その時期に応じて形態異常を起こす器官が異なり、最終月経から数えて14週間が特に問題になります。
神経系は2~4週間、心臓は3~6週間、四肢は4~7週間目に作られるので、この期間の薬の使用には注意が必要です。
特に受精してから7週までは比較的大きな形態異常が起こりやすく8~16週頃は器官の成長も続きますが、生理・機能の作用の成長段階にあるので、器官の機能障害や比較的小さな異常が起こり14週間を過ぎた後は、少なくとも形態異常についてはあまり心配することはないと言われています。
ただ、妊娠に気づくのは生理が止まってしばらくしてからであり、気づいたときはすでに3か月ということが多いため注意しなければなりません。
この期間に不注意に胎児の器官を作るのに影響のある薬を用いると、きわめてまれに形態異常が起こることがありますが、先天異常は何も薬を服用していなくても、小さな異常も含めてすべての出産に対して3~5%の頻度で発生するといわれています。先天異常の多くは原因不明で、環境などの外因要因が全先天異常の5~10%。薬によるものは1~2%に過ぎないと考えられていますが、この期間はたとえ副作用の少ない薬でも、安易な使用は避けるべきです。
しかし、お母さんの病状を考えてやむをえず薬を用いる場合には、できるだけ安全なものを、効果のある範囲の量を、短期間に限るようにします。受診時や薬剤服用時には、医師、薬剤師に相談し、自分の判断で中止しないようにしましょう。

次に、器官形成期を過ぎた胎児では、薬は母体から胎盤を通過して影響を及ぼします。

薬は胎児の肝臓や腎臓で代謝・排泄されない場合は、再び胎盤を通って母体に戻るため直接の障害作用は少ないと考えられていますが、現在のところすべてがわかっているわけではありません。
例えば抗生物質のテトラサイクリンが骨、歯に影響することがあるとか、カドミウム、水銀などは、母体へ胎盤を通って戻りにくいことから胎児に沈着しやすくなります。
胎盤は胎児を守るために、関所の役目をしていますが、胎児に必要な栄養を通すという仕事上、脳を守る血液-脳関門のように入ってくる物に対して、厳重なチェックはしにくくなっています。
従って、妊婦に用いられた多くの薬は胎盤を通過して胎児に届いてしまいます。よく通過するものには、抗生物質、睡眠剤、サルファ剤、性ホルモン剤、ビタミンAなどがあります。

周産期では、妊娠末期に用いた薬が胎児体内に届いている状態で出産した場合には、生まれた新生児の体内で薬が悪影響を及ぼす可能性があります。
新生児では代謝・排泄の機能が十分ではありませんから、薬の種類にもよりますが、少量でも問題になることがあります。

妊娠期間中でも安心して服用できる薬は、多くあります。
「妊娠している(可能性)がある」、「妊娠を希望している」ことを医師・薬剤師に告げ、安全な薬を選択してもらい、お母さんの健康を第一に考えていきましょう。


妊娠を考える女性にとって、抗うつ剤の影響は気になるところと思います。けれど、無理や自己判断をしてはいけません。

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