てんかんと抗ヒスタミン剤:風邪薬や花粉症の薬の服用は慎重に ..


アレルギー症状は抑えないと、ストレスが強くなり、てんかん発作の誘因にもなりますので、飲まないように指示するのは困難です。20年ほど前に外来で診ていたてんかん患者さんでアレルギーに対して抗ヒスタミン薬を他科から処方されてから発作がひどくなった経験があります。調べるとアレルギーで服薬されていた薬の添付書にてんかん発作を増悪させることがあるので慎重に投与するようにと書かれていたことを知りました。抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎の発症部位である鼻粘膜でアレルギーを起こすヒスタミンを阻害する薬ですが、脳内に対しては覚醒を妨げる、つまり眠気が強くなる作用をもたらし、てんかん患者さんには発作が起こりやすくなる状態を招きます。最近は脳内に移行しにくい新しい抗アレルギー薬がたくさん出ていますので、これらを選ぶように指導しています。


・長期使用で胃痛が出現することがあり注意が必要です。 □ディレグラ®

今年も花粉症のシーズンがやってきました。スギやヒノキの花粉は2月から4月にかけてピークを迎えますが、今年は例年より花粉の飛散量が多いと報道されております。花粉症の症状を和らげるためには抗ヒスタミン薬が有効ですが、てんかんがあると内服することに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

このようにヒスタミンは身体の中で様々な働きをしていますが、抗ヒスタミン薬はこれらの受容体にヒスタミンと競合して結合し、ヒスタミンの作用をブロックします。私たちの身体の中には血液-脳関門という、血液中の物質が容易には脳(中枢神経系)に入り込めなくするバリアが存在します。しかし、抗ヒスタミン薬の中には血液-脳関門を通過しやすいものもあり、これらの薬剤は中枢神経系のH1受容体にも作用し、眠気などの副作用を引き起こします。

ケトチフェンフマル酸塩(ザジテンR):年齢の制限はなく用量記載,てんかんまたはその既往歴

抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、第一世代抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミンやシプロヘプタジン、プロメタジンなど)は血液-脳関門を通過しやすいため中枢神経系への移行が多く、第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジンやオロパタジン、エピナスチンなど)は血液-脳関門を通過しにくいため中枢神経系への移行は少なくなっています。

第一世代のものは眠気の副作用や痙攣発作のしきいを下げて発作を誘発する可能性があるため、てんかんの患者様には適していません。「てんかんの方は抗ヒスタミン薬を飲まない方が良い」と言われるのはこちらの薬剤のことを意図して言われているのだと思います。一方、第二世代のものは中枢神経系への影響が少なく、眠気などの中枢神経系の副作用を起こしにくいとされていますので、てんかんの患者様でも安心してお飲み頂けます

[PDF] 付表① 当院で汎用される抗アレルギーと使用時の注意点

ただ、花粉症症状により夜間の睡眠の質が悪化したり日中の眠気がでること自体がてんかん発作のリスクにもなりますので、個人的な意見としては抗ヒスタミン薬を使用してしっかりと花粉症症状を抑えることをお勧め致します。

てんかんを理由に抗ヒスタミン薬を処方してもらえなかった方は、てんかんの主治医にも一度ご相談されてはいかがでしょうか?

②特発性部分てんかんに対する第一選択薬は,カルバマゼピン,バルプロ酸,レベチラセタ