ナトリウム・水貯留作用により、電解質異常が増悪するおそれが ある。 創傷治癒を遅延するおそれがある。 心破裂を起こしたとの報告がある。
投与されたステロイド剤は、細胞内に取り込まれますが、細胞内ではステロイドに特異的なレセプター(受容体)と結合しステロイド・レセプター複合体がつくられます。このレセプターの存在は、細胞内におけるホルモン作用の発現に必要な条件であり、レセプターの存在は細胞ではホルモン作用が発現しません。
ホルモンの作用は、レセプターの数と、ホルモンとレセプターの結合親和性によって決定されます。現在、臨床的に使用されている合成ステロイド剤はいずれも天然型のヒドロコルチゾンよりも生物学的活性が強いのですが、その理由として血中半減期の延長のほかこのようなレセプターに対する親和性の増強があげられています。例えば、デキサメタゾンの場合、ヒドロコルチゾンの約30倍の強さを持っていますが、レセプターとの親和性はヒドロコルチゾンの約8倍であり、自分の副腎皮質ホルモンの生産抑制の強さである血中半減期は約3倍です。
作用の強いデキサメタゾンエリキシルの使用頻度が高くなる。(50歳代病院 ..
クッシング症候群の第一例は、精神病院においてみつけられたと言われます。これほどグルココルチコイドの中枢神経系に及ぼす影響は大きいのです。
その強さには、個人差がありますし、また症状の現れ方も人によってことなります。この作用機序の詳細は不明ですが、脳内の各所にステロイド受容体が存在し、視床下部はもちろんのこと、海馬、扁桃、大脳皮質にも多く集まっています。
(1)糖代謝を中心として
ステロイド剤は、グルココルチコイドと呼ばれているように、その代謝作用の特徴は血糖値の維持と上昇です。すなわち、グルココルチコイドを投与すると、まず肝以外の組織、たとえば脂肪組織、皮膚、リンパ組織におけるブドウ糖の細胞内への取り込みが抑制されます。これに続いて、脂肪組織では中性脂肪の合成が抑制され、脂肪分解が亢進、血中に遊離脂肪酸が放出されます。このプロセスとして、カテコラミン等の脂肪動員ホルモンの作用を増強すると考えられています。
その他の組織では、血中にアミノ酸が動員されます。こうして動員された遊離脂肪酸とアミノ酸は肝に集められ、一部はエネルギー原として用いられ、他はブドウ糖の合成に利用されます。肝で合成されたブドウ糖は一部グリコーゲンとして蓄えられるが、残りは血中に放出され血糖値を上昇させます。
以上のようなグルココルチコイドの糖新生作用はインスリンによって拮抗され、大量のステロイド剤を投与した時はインスリンの分泌が亢進します。
インスリンに対する感受性の強い顔面や身体には脂肪が沈着して、満月様顔貌や水牛肩を呈し、一方、四肢や方ではステロイドの作用で皮膚の筋支持組織の委縮がおこり、皮膚に深い溝が出来るためしわしわが出来ます。
(2)脂質代謝
ステロイド剤を長期投与していると、肝に動員されてきた脂肪酸を材料として中性脂肪やコレステロールの合成が亢進し、高脂血症をきたします。ステロイド剤による食欲亢進から来る過食も同じく高脂血症を助長します。
(3)骨に対する作用
ステロイドによる蛋白異化亢進、骨芽細胞の抑制(骨形成の低下)、腸管からのカルシウム吸収抑制、尿中カルシウム排泄増加、ビタミンD活性化阻害によってカルシウム負平衡となる結果、二次性副甲状腺機能亢進症、ひいては骨吸収の亢進というメカニズムで骨粗鬆症をおこします。
(4)電解質作用
現在使用されている合成ステロイド剤は電解質作用が弱くなっているので、ナトリウムの貯留やカリウムの喪失は少ないのですが、プレドニゾロン大量投与中やヒドロコルチゾンを使用している時には低カリウム血症やナトリウム貯留に基づく浮腫をきたすことがあります。
健康成人男子 10 例に、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム(デキサメタゾンとして 20 mg)を ..
ステロイドは、細胞膜を通過後、細胞質のグルココルチコイドレセプター(GR: glucocorticoid receptor、ほぼすべての細胞に存在する)に結合する。ステロイドの結合したGRは、核内へ移行し、標的遺伝子の発現を転写因子レベルで調節すると考えられている。転写因子NF-κBやAP-1などと相互作用することが報告されている。この結果として、炎症に関与するサイトカインなどが負に制御され、免疫抑制作用が発揮される。
(1)リポコルチンの産生とその作用
ステロイド剤によってマクロファージや白血球から産生される抗炎症性の蛋白をリポコルチンと呼んでいます。
リポコルチンはステロイドの作用によって産生が増加するのですが、通常補蛋白合成過程に基づくものとみなされており、ステロイドの抗炎症作用が効果発現に2~3時間を要する原因と考えられています。リポコルチンはホスホリパーゼA2の作用を阻害することによって、プロスタダランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンの生成を抑制します。これらのケミカルメジエーターの生成過程においてホスホリパーゼA2によるアラキドン酸の生成は律速段階になっており、重要な反応なのです。これをステロイドホルモンが抑制するので、ステロイドホルモンの抗炎症作用は強力で広範囲に及ぶわけなのです。
今まで、ステロイドの抗炎症作用として炎症局所における血管透過性の更新や血流増加の抑制作用が重視されていましたが、これらはリポコルチンによるケミカルメジエーターの産生抑制に基づくものと考えられます。
抗炎症作用を有し、電解質代謝に影響を及ぼすが、デキサメタゾンは前者の作用が著しく、後者の.
大腿骨頭壊死のリスク因子として大腿骨頸部骨折などの外傷以外にも、ステロイド投与、SLE、アルコール摂取、高脂血症、高尿酸血症、喫煙、妊娠、腎不全、過凝固など多くの要因が関与することが知られている。大腿骨頭壊死は単純レントゲンで明瞭でない場合でもMRI撮影では感度良く診断される。ステロイドによる骨壊死の機構として、高脂血症による微小塞栓、骨髄内脂肪細胞の増大による血流阻害、静脈内皮障害から静脈鬱帯をきたし骨内圧を上昇させ骨壊死に至るなどの仮説が提唱されている。臨床でのステロイド使用と骨壊死の関係に関しては多くの報告があるが、残念ながら症例報告や後ろ向き研究報告が主でコントロールを置いた質の高い臨床試験は少なものの、ステロイド総投与量やステロイド投与期間よりも初期投与量が多い場合に骨壊死をおこしやすく、またムーンフェイスなどのクッシング様外見を呈すると骨壊死をおこしやすいという報告がある。画像診断手段による違いもあるがSLE患者では3~30%の頻度で骨壊死が生じるとされ、治療開始後1年目にMRIで異常がなければ以後の骨壊死のリスクは低いとされるが、年余を経て発症することもある。
動物実験ではウサギへメチルプレドニゾロン(20mg/kg)を投与した場合、4週後に43%に骨壊死が発生し、壊死領域動脈に血栓を認め、6週後では血管再生像を認めている。ステロイドの種類では、メチルプレドニゾロンはプレドニゾロンやトリアムシノロンより骨壊死頻度が高く、メチルプレドニゾロン投与後のコレステロール、トリグリセリド、遊離脂肪酸はより高値だった。ウサギにワーファリンと脂質降下剤を投与するとステロイド骨壊死頻度は低下している。
本剤投与時に特に注意が必要な患者については,CYP17阻害作用に伴う鉱質コルチコイド濃度の上
副腎と疾病との関係についての業績はThomas Addison(1855)の発表をもつて嚆矢とするもので当時青銅病(後年彼の業績と名誉を讃えAddison氏病と命名)といわれていた一定の症状を呈して死に至る原因不明の疾患について,その剖検所見から本疾患ではいずれも副腎が破壊されていることを認め,副腎との密接な関係にあることを報告したことに始り,さらに1856年Brown Séquardが動物実験において両側副腎摘出例ではいづれも死亡するが,摘出後に再び副腎を移植することによつて生存し得ること,さらに髄質のみの摘出では異常を来たさないが皮質の摘出によつて始めて死亡に至ることを確め,それまで機能不明であつた副腎が生命維持に必要不可欠の器官であることが判明し,副腎皮質の研究が進められついに1930年,Hartman,Swingle&Pfifferらにより牛副腎からAddison氏病に有効なエキスの抽出に成功するに至つた。このように副腎皮質の研究目標はAddison氏病治療に端を発しcortisonの発見にまで至つたのであるが,1949年Henchがcortisonが抗リューマチ剤としての卓効を示すという発表を契機として副腎皮質ホルモンの研究は急回転してリューマチ疾患の治療薬に向けられるようになり,臨床研究が俄然盛んとなり,さらに製造過程の工夫から量産的製造が可能となり,その研究に拍車をかけたのは周知の通りである。一方cortisonが広く使用されるようになつた反面その好ましくない副作用が観察されて来たので治療薬品としての改善研究が急務の目標となつて来た。副作用の大部分は皮質ホルモンが有する代謝作用の結果現われるもので,正常の代謝機能が誇張された現われに過ぎない。すなわち代謝作用をその特微からみると糖質代謝作用が強いgluco-corticoidと電解質,塩類代謝作用が強いmine-ralcorticoidとに分類出来るが,その副作用を考慮し,glucocorticoidの有する代謝効果と抗リューマチ効果とを分離して,抗リューマチ効果のみをもたせるか,glucocorticoid効果を極カ抑えて抗リューマチ効果をいかにクローズアップさせるか,その化合体の発見を目標とする研究が始り,その結果1954年抗リューマチ効果がcortisonの4倍強く,しかも臨床的に有効な用量では副作用(NaおよびKの貯留効果)が現われないというprednisone,prednisoloneの発見となり,さらに6α-Methylprednisolone(1956),16α-hyd-roxy-9α-fluoroprednisolone,Triamcinoloneなどが生れ1958年Oliveto,Sarettらは16α-Methylatedsteroidの中でもとくにDexametha-sone(9α-fluoro-16α-methylprednisolone)が副作用のほとんどない優れた特性を有することを発見した。この生理作用は肝グリコーゲン試験でhydrocortisoneの17倍,抗炎症作用は20〜40倍抗リューマチ効果はprednisoloneの6倍とされている。構造式は第1図のごとくで,C1C2の間の二重結合により,これまでの副腎皮質製剤に比し,抗炎症作用が増強され,C9のアルファFの出現はさらにこの作用を増加させ,C16にα-methyl基が導入されることにより抗炎症作用の増強にもかかわらずNa貯留作用がほとんどないことが判つたのである。