紅白歌合戦で聴きたいのは口パクのアイドルグループとかじゃなく、こういった本気で音楽をやってる素晴らしい演奏と歌なんだよ!
ピアニストのスティーブン・ゴスリングと、ソプラノ歌手バーバラ・ハンニガンの2人が、超絶技巧を必要とするジョンの新作歌曲に挑んでゆく過程をカメラが丹念に追う。自己のテクニックに行き詰まりを感じたバーバラの姿と、ジョンのジャズバンド仲間たちが野外で演奏している朗らかな表情が対照的に編集され、そこからジョンが生み出そうとしている新しい音楽の片鱗が見えてくるようだ。
PianoDuo【Ruce】るーちぇ · 3:50 · スペースコブラ COBRA 連弾ピアノ演奏 演奏は特定行政書士 矢部久美子先生
ここでは主にジョンの多様な作曲作品の魅力が紹介される。彼はフリーミュージックやグラインドコア、弦楽四重奏やアルカイックな女声合唱まであらゆる音楽表現を自在に操り、そのどれにも縛られず軽やかに音楽の世界を飛翔する。詩のように挿入されるジョンの人生や哲学から、彼の音楽を構成する一端が垣間見える。ギタリストのマーク・リボーやジュリアン・ラージ、2022年にマッカーサー賞を授与したモリイクエも登場する。
今年で14年目を迎えた即興音楽とアートの祭典「JAZZ ART せんがわ 2021」で、3年ぶりとなる「John Zorn’s Cobra(以下、コブラ)」のコンサートが、キーボード奏者・坂口光央によるオーガナイズのもと「John Zorn’s Cobra 東京作戦 坂口光央部隊」として実施された。計12名の参加メンバーの顔ぶれは本稿上部をご参照いただきたいが、こうした機会でもなければ揃うことのないバラエティに富んだラインナップとなっており、「背景を異にするミュージシャンたちが、背景を異にしたまま共同で即興的なセッションを行う」という「コブラ」ならではのコンセプトを、パフォーマンスとして実現することができたとひとまずは言えるだろう。
コブラは、1984年にジョン・ゾーンが作曲したゲームの理論を応用した即興演奏のシステム。プロンプターは、お馴染みの巻上公一が担当。
当日の模様をレポートする前に、まずは「コブラ」について簡単に触れておきたい*。「コブラ」はアメリカの音楽家ジョン・ゾーンが1984年に発表したゲーム・ピースで、集団での即興演奏をシステマティックなルールにもとづいて行うための作品である。タイトルは戦争を題材とした同名ボードゲームからインスピレーションを得ているという。通常の作曲作品のように譜面やテキストは公開されておらず、口承伝承を重視するゾーンの意向によって、その詳しい内容は秘匿とされている。ただし、1987年の2枚組アルバム『Cobra』には「コブラ」で使用するカードやハンドサインの種類および指示内容について簡潔に記載されたテキストが収録されている。とはいえあくまでも一部であり、このテキストからルールの全貌を把握することは難しい。また、インターネット上で検索するとより詳細に解説が加えられた非公式のテキストを見つけることもできるものの、その内容が実際にゾーンが手がけた作品とどこまで一致しているのかは確認することができない。
集団即興演奏のプロンプターとして、そして陽気なサックスプレイヤーとして、またNYのライブハウスの芸術監督として多面的に活躍するジョン・ゾーン本人の姿を捉えたドキュメンタリー。ジョン・メデスキやマイク・パットン、ネイト・スミスとのライブや練習風景、NYのサウンドスタジオでジョンのレコーディングに飛び入り参加する本作の監督でもあるマチュー・アマルリック、日本の歌謡曲研究家としても知られたジョンの日本での足跡を辿るパートではヒカシューの巻上公一など、各国のアーティストとジョンの交流が多彩な音楽とともに描かれる。
[PDF] ジョン・ゾーン《コブラ》の研究 : 即興演奏を素材 とした ..
アルバムに収録されたテキストと実際のパフォーマンスから「コブラ」の概要をごく大まかに説明すると次のようになる。パフォーマンスの場では、参加メンバーのうちの一人が指揮者に相当するプロンプターという役割を担う。プロンプターの目の前には記号が書かれたカードが多数置かれており、プロンプターはこのカードとハンドサイン等を用いて腕を振り下ろすことで演奏者に指示を出す。演奏者はプロンプターと向かい合って半円形に並び、指示に応じて即興的に演奏を行う。だが演奏者は指示を受けるだけでなく、自らハンドサインで意思表示をすることができ、時には「ゲリラ」というシステムを通じて演奏者が一時的に独立したポジションをキープし、他の演奏者に対して指示を出すこともできる。ゲリラ・システムは複雑にルール化されているが、演奏者がヘッドバンドを装着し、プロンプターが帽子を被ることで、ゲリラが発生していること自体は観客にもわかるようになっている。こうした「コブラ」の特徴とより具体的なプロンプターの指示内容について、ジョン・ゾーンを特集した『ユリイカ』1997年1月号に掲載されたテキストが要点を簡潔にまとめているので、重複する箇所もあるが引用しよう。
「コブラ」とは、ジョン・ゾーンが作った複数のミュージシャンのための曲であり、ゲーム形式の即興演奏システムである。参加人数は10名前後が望ましいとされる。演奏は、プロンプターがカードを示して、開始、停止といった単純なものから、デュオの設定、曲想や音量の変化、演奏のメモリーなどの複雑なものに至る演奏形態を指示し、また逆にミュージシャン側も目や鼻、耳と指を使ってプロンプターに意思表示をすることで進行する。この曲の大きな特徴は、ゲリラ・システムを内包していることで、これによってミュージシャン側もタクティクスを使うなどして独自に演奏を展開することができる。(『ユリイカ』1997年1月号、青土社、88ページ)
『コブラ - COBRA -』前野曜子 【スペースコブラOP】バンドカバー ..
なんの取り決めもなしに集団即興を行う場合、演奏内容はそれぞれの演奏家の自発性に委ねられることになる。そのため、演奏者同士の関係性が強く前面に出てくるのだが、他方では、緩やかに盛り上がりのカーヴを描くようなパターンに陥ることも多く、演奏内容のマンネリ化と紙一重でもある。「コブラ」は独自の複雑なルールにもとづいて集団即興を構造化することで、こうした意味でのマンネリ化を回避し、さらには出自の異なる演奏者同士が共にセッションを行うことを可能にしたという点で、画期的な作品だったと言えるだろう。とはいえ、指揮を取り入れて集団即興を構造化するという試み自体は、ゾーンが初めて手をつけたわけではない。ジャズと関連する分野の録音作品に限っても、例えばサン・ラーは1965年録音の『The Magic City』ですでに指揮を取り入れており、1976年に録音されたアンソニー・ブラクストンの『Creative Orchestra Music 1976』でも大半の楽曲でレオ・スミスまたはムハール・リチャード・エイブラムスが指揮者を務めている。ゾーンが「コブラ」を初演した1980年代には、ブッチ・モリスがまた別の文脈から「コンダクション」という指揮を取り入れた独自のシステムを開発していた。
ジョン・ゾーンが考案した複数のミュージシャンのためのゲーム形式の即興演奏システムである。プロンプターからの指示と、ミュージシャンによる合図、メンバー全体の意思疎通によって予測不可能な演奏が進行していく。システムの詳しい内容はジョンゾーンの口伝により、限られたミュージシャンにしか伝えられておらず、今回はジョンの意向により巻上公一がプロンプターを務め、この日限りの特別メンバーによるCOBRA東京作戦が開催される。
本研究は,アメリカの音楽家,ジョン・ゾーン(JohnZorn 1
1970年代半ばにNYのダウンタウンの音楽シーンに入り、即興的なアーティストとコラボレーションしながら実験的な音楽を作曲する新しい方法を開発した。1985年にノンサッチ・レコードからエンニオ・モリコーネの映画音楽を過激に再構築した『The Big Gundown』がリリースされ、広く賞賛された。自身が率いるバンド〈Naked City〉、〈Painkiller〉などでパンク・映画音楽・カントリー・フリージャズなどの影響の元さまざまな手法を取り入れた実験的な演奏を行い、そのアルバムに世界から大きな関心が寄せられた。
親日家としても知られ、80年代後半から90年代前半、高円寺に住んでいた時期があり、日本の歌謡曲・映画などにも非常に詳しく、山塚アイ、巻上公一、灰野敬二、吉田達也など、日本のミュージシャンとの共演も多数、日本の音楽シーンに多大な影響を及ぼした。90年代半ばに自身のレコード・レーベル〈Tzadik〉を設立、増え続ける膨大な新曲を録音し、リリースしている。また多くの注目すべき実験音楽・映画音楽・ユダヤ人アーティスト・若手アーティストの作品を多くリリース、プロモーションしている。
自身の出自であるユダヤ文化の研究に取り組み、クレズマーなどユダヤ音楽のアイディアに着想を得て〈Masada〉プロジェクトシリーズとして数百曲を作曲し、マサダ・カルテットやマサダ・ストリングスなどの、ジョン・ゾーンが愛する仲間といくつかのグループで発展しながら演奏されている。
〈John Zorn’s COBRA〉など即興演奏家のためのゲームスタイルを取り入れたゲームピースも多数考案している。
クラシック音楽家のための作品も多数作曲し、Kronos Quartet やニューヨークフィルハーモニーなど世界中のオーケストラやアンサンブルで演奏されている。
ミュージシャンによる作曲プロセスについてのインタビューやエッセイを集めた書籍「Arcana」シリーズを継続して発表し続けている。
また2005年に前衛的なパフォーマンス・スペースであるThe Stoneをニューヨークのダウンタウンに設立、現在もグリニッジ・ヴィレッジのザ・ニュー・スクールで継続して寄付と限定CDの販売のみで運営している。どの作品もプロジェクトも非常にユニークで実験的で思索的であり、膨大な仕事量と作品群は他の追随を全く許さない。世界中の音楽ファンから尊敬され、注目され、影響を与え続ける天才中の天才である。
主な共演者に、マーク・リボー/Marc Ribot、フレッド・フリス/Fred Frith 、マイク・パットン/Mike Patton、ビル・ラズウェル/Bill Laswell 、ビル・フリーゼル/Bill Frisell 、クリスチャン・マークレー/Christian Marclay、アート・リンゼイ/Arto Lindsay、ネッド・ローゼンバーグ/Ned Rothenberg、ジョイ・バロン/Joey Baron、イクエ・モリ/ Ikue Mori 、シロ・パプティスタ/Cyro Baptista など。
[PDF] 即興演奏を素材 としたコラージュとゲームをめぐる考察
2009年6月14日(日)
John Zorn’s Cobra Tokyo Sengawa operation 内橋和久部隊
青木タイセイ (tb)
イクエ・モリ (electronics)
石橋英子 (key, vo, etc)
内橋和久 (g)
ジム・オルーク (g)
シルヴィー・クルボアジェ (p)
千住宗臣 (ds)
七尾旅人 (vo)
ナスノミツル (b)
山本達久 (ds)
横川理彦 (vl)
渡邊琢磨 (p)
巻上公一 (prompter)
本論文は,アメリカの音楽家,ジョン・ゾーン(John Zorn 1953- )の代表作《コブラ(Cobra)》
2010年7月11日(日)
John Zorn’s COBRA 東京せんがわ作戦 大友良英部隊
Haco (vo, electronics)
吉田アミ (vo)
やくしまるえつこ (vo)
スネオヘアー (vo, g)
高田漣 (steel guitar, etc)
石川高 (shō)
四家卯大 (cello)
Sachiko M (sinewaves)
AYA (b)
OLAibi (perc)
山本達久 (ds, perc)
大友良英 (prompter, g)
巻上公一 (prompter, vo, theremin)
既に発表されている「へでもねーよ」「青春病」「旅路」、ストリーミング累計2億回再生を突破した「きらり」、紅白歌合戦でサプライズ生演奏 ..
2017年9月15日(金)
John Zorn’s COBRA
山本達久 (ds)
ジョー・タリア (ds)
坂口光央 (key)
吉田隆一 (bs)
藤原大輔 (ts)
太田恵資 (vl)
大隅健司 (voice)
諏訪創 (dolçaina)
纐纈雅代 (as)
柳家小春 (shamisen)
熊坂路得子 (acc)
後藤篤 (tb)
パール・アレキサンダー (b)
巻上公一 (prompter)
【楽譜】コブラ / 前野 曜子(メロディ譜)提供:大岡晋平 | 楽譜@ELISE
ジョン・ゾーンは、驚くべき決断力で、たくさんの音楽家に道標を作る天才の中の天才である。
ジョンが日本の音楽シーンに与えた影響は計り知れない。
ぼくは彼と同時代に生きていることに感謝したい。
最愛の友人であるジョン・ゾーンの70才の誕生日におめでとうを言おう。【巻上公一】
楽譜のダウンロードとコンビニ印刷✨1曲110円から! @ELISE アット・エリーゼ · 詳細検索; 楽器・演奏形態でさがす ..
2008年から2013年にかけて、「JAZZ ART せんがわ」では毎年「コブラ」が開催されていた。全て日曜日となっていることからも窺えるように、この時期の「コブラ」はフェスティバルの最終日に、最後の演目としていわば大トリを飾っていたのである。すなわち「コブラ」は「JAZZ ART せんがわ」を象徴する催しの一つだった。その後、2014年から2016年にかけて3年間の空白を経て、フェスティバル内の一つのイベントという位置づけで2017年と2018年に再び開催されることとなる。ただし、3年間の空白期間に国内で「コブラ」が全く開催されなかったわけではなく、フェスティバル以外の場所に目を向けると、巻上公一がプロンプターを務めたイベントが2014年から2016年にかけてたびたび開催されている。
[PDF] JASMIM ジャーナル(日本音楽即興学会誌) vol
2018年を最後に調布市の主催を離れたことも影響しているのだろうか、再び空白期間を経て、今年、「コブラ」が「JAZZ ART せんがわ」で久しぶりに上演されることとなったのである。フェスティバル3日目となる9月18日に行われた「コブラ」では、前半で10分以内のパフォーマンスが4セット、休憩を挟んだ後半では30秒~10分以上とセットごとに長さが大きく異なるパフォーマンスが4セット行われた後、メンバー紹介を経て、最後にアンコールを兼ねた短いセットが披露された。総じて前半は探り合うような緊張感があり、後半は各メンバーがリラックスしつつより柔軟な演奏を聴かせてくれたように思う。その中でもとりわけ、最も長い時間(約12分半)演奏された後半2セット目がハイライトだったと言えるのではないか。
[Bass Cover] コブラ (playing: Otomania)
この映画は大事な歴史の記録であるばかりでなく強いエネルギーで私たちの人生に飛び込み問いかけてくる。
その問いは音楽や芸術の枠を超えている。
不確定性に溢れた日々の営みそのものへの問いかけでもあるような気がする。【石橋英子】
音楽・サウンド · 演奏してみた 弾いてみた Otomania ベース アニソン コブラ COBRA
わずか30秒で終了した後半1セット目に続いて行われた2セット目では、冒頭で緩やかに全体がクレッシェンドしていき、不協和なアンサンブルを支えるようにドラムスの山本達久とベースのかわいしのぶがグルーヴィーなリズムを形成するところから始まった。プロンプター・巻上公一の指示でシーンを切り替えていくほか、フルートの松村拓海やサックスの松丸契らが積極的にハンドサインで意思表示を送る。短いフレーズを多人数でキャッチボールするように投げ合う点描的なセッションのあと、いくつかのシーンの切り替えを経て、それまで主に即興的なヴォイス・パフォーマンスを聴かせていた田上碧が突如として童謡「朧月夜」の独唱を始めた。すると他の演奏者全員が挙手して意思表示し、田上が4人を指名。タイミングを見計らって合奏が始まったのだが、野本直輝のモジュラーシンセがギィギィとノイズを出しつつ、かわいしのぶのベース、坪口昌恭のピアノ、坂口光央のキーボードが惚けたようにズレた音を添え、なんとも奇妙な音楽となっていた。