メチルプレドニゾロンまたはデキサメタゾンによる高用量コルチコステロイドパルス療法(HDCPT) ..
これまでのCOVID-19に対する吸入ステロイドの有効性を検証した報告では主に,明らかな肺炎のない症例や,外来で管理できる症例に限った研究が多い。前述の「STOIC試験」でも酸素化の保たれている軽症例が対象となっているが,「PRINCIPLE試験」ではCOVID-19の重症化リスクである高齢者や併存症のある症例が対象となっており,高リスク群に対する効果が示されたことは,大変期待できる結果であった。ただし慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)に対する吸入ステロイドは,新型コロナウイルスが気道上皮に感染する際に必要となるACE2受容体の発現を減少させ,COVID-19の感染予防に効果を示すと言われている。「PRINCIPLE試験」でもブデソニド吸入群に現喫煙者や過去喫煙者が46%含まれていることや,喘息やCOPD症例が9%含まれていることは差し引いて考える必要がある。また,ブデソニド吸入はタービュヘイラーⓇというデバイスを用いて薬剤を投与する必要があるため,呼吸促拍している症例や人工呼吸管理の重症例に対しては,吸入ステロイドの投与は現実的には難しい。
新型コロナウイルス感染症に対するバリシチニブとremdesivirの併用投与をデキサメタゾン ..
英国オックスフォード大学Yuらが報告した「PRINCIPLE試験」は,65歳以上あるいは併存症のある50歳以上のCOVID-19疑いの非入院症例4700例を対象に行われた。結果は,吸入ステロイドであるブデソニド吸入の14日間の投与で回復までの期間を標準治療群と比較して2.94日短縮(図12)23)し,「STOIC試験」と同様の結果が得られた。4700例の被検者は標準治療群1988例,標準治療+ブデソニド吸入群1073例,標準治療+その他の治療群1639例にランダムに割り付けられた。ブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入し,最大14日間投与するという治療で,喘息治療でいうところの高用量で行われた。症状回復までの期間推定値は被検者の自己申告が採用されたが,標準治療群14.7日に対してブデソニド吸入群11.8日と,2.94日の短縮効果(ハザード比1.21)を認めている。同時に評価された入院や死亡については,標準治療群8.8%,ブデソニド吸入群6.8%と,2ポイントの低下を認めたが,優越性閾値を満たさない結果であった。
いずれの研究においてもデキサメタゾンは6mgの固定用量で規定されているのに対し,メチルプレドニゾロンは体重換算で薬剤の投与量がコントロールされている。したがって,実臨床の現場においてデキサメタゾンで治療するにしても,他のステロイド製剤で治療するにしても,体格の大きな若者と体の小さなおばあちゃまとで同量のステロイドで治療するのではなく,年齢や体重を勘案すべきである,と考えている。また長期にステロイドで加療するとなると,消化性潰瘍・血糖値・骨粗鬆症,そしてニ次的なその他の感染症の発症に注意する必要があることは言うまでもない。
用量で継続投与とし、新型コロナウイルス感染の兆候がある場合は、これら ..
デキサメタゾン以外のステロイド製剤のCOVID-19に対するエビデンスは乏しいが,メチルプレドニゾロンの報告をいくつか紹介したい。イランから報告されたランダム化比較試験で,日本での「中等症Ⅱ」以上の酸素投与が必要なCOVID-19症例に対して,デキサメタゾン(6mg固定用量)投与群とメチルプレドニゾロン(2mg/kg)投与群が比較検討された。この研究は86例と少数例での検討であるが,メチルプレドニゾロン投与群では投与5日目,10日目の臨床的な状態がデキサメタゾン群に比べて有意に改善した。また,入院中に死亡した症例を除外した検討では,メチルプレドニゾロン群で入院期間の平均値が7.43日とデキサメタゾン群の10.52日と比較して有意に短いという結果であった。
リバウンド症例は発症から12日前後に多く認められ,20日目以降には認められないという特徴があった。さらに,リバウンド症例のステロイド加療は症状発症から5日目と発症早期に開始している症例が多く,治療期間も中央値で5日間とリバウンドしなかった症例に比べて短かったという結果(図7)であった。やはり,ウイルス感染症の発症早期にステロイド加療を行うことは,場合によっては逆効果なことがあり,発症から7日間あたり,そして治療期間としては7日間程度の「コロナステロイド7日ルール」(筆者考案)が重要かと考えることができる。
今回は、生理痛が起こる原因や対処法、受診が必要なケースについて、低用量ピルによる治療に着目して解説します。 ..
次にステロイドの投与期間や投与開始日について考えてみよう。『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6.0版』では,「デキサメタゾンとして6mg 1日1回10日間まで」と記載されているのみで,最適な投与期間や投与開始日については詳しく言及されていない。
以上の結果から,実際の現場では酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19に対してデキサメタゾン6mg(実際の臨床現場にて点滴でステロイドを投与する場合には,静注用のデキサメタゾン製剤が6.6mg規格のため,6.6mg/日投与されていることが多い)または同力価のステロイドで治療している。逆に,わが国の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6.0版』(2021年11月公開)においても,酸素投与を必要としない症例に対してはステロイドを使用すべきではなく,予後をむしろ悪化させる可能性が示唆されている,としている。
用量の投与で新型コロナウイルス感染症の致死率を低下させたという報告が ..
日本静脈学会・肺塞栓症研究会・日本血管外科学会・日本脈管学会が発表している『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における静脈血栓塞栓症予防の診療指針 2021年4月5日版(Version 2.0)』では,酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」の症例で“ヘパリンの予防投与を考慮”し,ICU管理や人工呼吸管理の「重症」の症例では“ヘパリン投与を行う”としている。逆に酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」においては“(基本的には)抗凝固療法は不要”とし,離床・下肢運動・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法などを中心とした理学療法が勧められている。
当初は敵の特徴がわからなかったため,真っ白な肺炎像を見て広域抗菌薬やステロイドを大量に投与して,後はお祈りするのみであった。しかし,今は,COVID-19の特徴はもとよりエビデンスのある治療薬がそろってきたため,2年前と比べたら戦い方も格段に慣れてきた印象がある。新型コロナウイルスと出会った当初は,頭のてっぺんから足の先までfull PPEと呼ばれる感染防護具を身に纏っても防護具のスキマを気にしながら診療にあたっていたことや,素性のわからない見えない敵に対して何度となく手洗いやアルコール消毒を行っていたことなどが思い出される。しかしながら,2021年初めには感染予防効果や重症化抑制効果の高い新型コロナワクチンであるmRNAワクチンが日本でも普及し,現在は鉄の鎧を身に纏ったような安心感を持って診療に当たることができている。
[PDF] COVID-19 の薬物治療ガイドライン version 4 1
コロナ治療として服用する場合、デキサメタゾンとして6mgを1日1回10日間服用することになります。
新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第 8.0 版
デキサメタゾンは、症状や体重などで服用量が変わります。ここからは、症状別に基本的な飲み方を紹介します。
[PDF] COVID-19 の薬物治療ガイドライン version 5 1
現在のCOVID-19に対するステロイド療法は、大規模なランダム化比較試験であるRECOVERY試験の結果に基づいています(N Engl J Med. 2021 Feb 25;384(8):693-704.)。つまり、酸素を必要とするCOVID-19患者に、デキサメサゾン6mg/dayを7~10日間投与するというものです(酸素を必要としない患者へのステロイド投与は、予後を悪化させる可能性が示されています)。しかし、SARS-CoV-2による肺炎は、発症7~10日目に悪化しやすい特徴があります。そのため、発症早期に酸素化が悪化しステロイドを投与した例では、発症7~10日またはそれ以前に投与を終了すると再増悪することを経験します。したがって、ステロイドの投与期間は7~10日間と限定せずに、投与開始日と病態のピークを勘案しながら、長期投与および状況に応じて漸減することを検討する必要があります。一方で、発症7~10日目以降にステロイド投与を開始した場合は、短期間で終了することも考えられます。
ステロイドパルス療法の効果については、ステロイドを使用しない群を対照にしたランダム化比較試験は、小規模ながら報告があります(Eur Respir J. 2020 Dec 24;56(6):2002808.)。この研究では、酸素を必要とする患者にメチルプレドニゾロン125mgを3日間投与することで、非投与群に比較し有意に死亡率が低下しています。デキサメサゾン6mg/dayとステロイドパルス療法を直接比較した介入試験は、現在のところ報告されていません。コロンビアの一施設において、デキサメサゾン6mg/dayの7~10日間投与(111例)を行って時期と、メチルプレドニゾロン250-500mgを3日間投与した後に、デキサメサゾン6mg/dayを11日間投与する治療法(105例)に変更した時期を比較したヒストリカルコホート研究が報告されています(PLoS One. 2021;16(5):e0252057.)。後者の方が回復までの期間が短縮し、ICUへの移送が減少したことが示されています。ただし、この結果には治療法が変更になった以外にも、他の医療水準が改善したことが影響している可能性があります。
パルス療法ではありませんが、メチルプレドニゾロン2mg/kgを1回投与後1mg/kgで5日間投与する群(44例)と、デキサメサゾン6mg/dayの10日間投与する群(42例)を用いたランダム化比較試験では、前者の方で改善が早く、人工呼吸器への移行も少なかった(18.2% vs 38.1%, p=0.040)ことが示されています(BMC Infect Dis. 2021;21(1):337.)。メチルプレドニゾロン群で良好な結果が示された理由は、ステロイドの種類というより力価としてデキサメサゾン6mg/dayより高用量であることが影響しているように思われます。
RECOVERY試験で示されたデキサメサゾン6mg/dayでは、治療量として不足する患者が一定数存在する印象を持ちます。デキサメサゾン6mg/dayにて改善が乏しい場合、もしくは当初からでも、より重症、増悪速度が著しい、肥満がある場合等は、ステロイドパルス療法を検討する必要があると考えます。