11 カンピロバクター腸炎(Campylobacter enteritis)
急性胃腸炎のガイドラインに沿って治療をします。すなわち、水分補給のより脱水を世簿することです。
通常は抗生剤無しの治療で十分ですが、腹痛が強い場合、熱が持続する場合、患児の免疫が弱い場合などではマクロライド系の抗生剤(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)を使用することがあります。
カンピロバクター腸炎は特に乳幼児や学童の下痢症として重要な疾患で、原因菌の95 ..
子どもでは少ないですが、感染後に自己抗体が産生されて神経を傷害するギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)(急性に発症する四肢麻痺を特徴とする末梢神経疾患)を起こすことがあります。
今日のテーマは、Campylobacter jejuniです。
火を十分に通していない鶏肉を食べると胃腸炎を起こすアレです。
最近は自宅でテレワークをしている方々も多いと思いますが、ご自宅で飼っているニワトリを調理するときは十分気をつけてください。
Campylobacter jejuni
ギリシャ語でcampylos(曲がった)とbaktron(桿菌) jejunum(空腸)→(胆汁を好み空腸で増える)
グラム陰性、無芽胞のらせん状桿菌(0.2〜0.8×0.5〜5μm)
Campylobacter属はArcobacter 属とともにカンピロバクター科 (Family Campylobacteraceae)を構成する。Campylobacter 属には 18菌種が含まれ,さらに亜種や生物型に分けられるものもある。
第₁選択薬であるマクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシン(CAM)とエリスロマイ.
腸炎後2〜21日で発症することが多いです。主に成人で起こりますが、自然発症に比べ発症率は100倍高いとされています。
難しい話になりますが、これはカンピロバクターのもつオリゴ糖とヒトの末梢神経の構成成分であるガングリオシドの構造が似ているために起こるとされています。
特殊型としてはFisher症候群(外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失)を生じることもあります。
病因・病態の特徴
全てのCampylobacterが病原性を持つわけではない。
最も重要な3つの要因
・小腸に到達する菌量
・感染株の病原性
・宿主の特異的免疫:特に液性免疫が関与
潜伏期間 1日〜7日 摂取した菌量が多ければ発症も早い。
多くは曝露後2〜4日で発症。
牛乳、脂肪分の多い食品、水など、胃酸バリアを通過しやすい飲食物を摂取すると、比較的低菌量で感染症が発生する可能性がある。(胃酸環境がCampylobacterの障壁となるため)
同様に、PPIまたはH2遮断薬を使用していると感染しやすくなる。
C. jejuniは、ヒトの胆汁で増殖する。これにより、感染の初期に胆汁が豊富な上部小腸の定着を助ける。空腸、回腸、結腸に腸炎を生じさせる。
しばしば菌血症を生じさせる。Campylobacter fetus subsp. fetusが良く報告されるが、C. jejuniの方が遥かにcommonである。
発熱 0.5 日(0.8 日),腹痛 2.3 日(1.9 日),下痢
・Campylobacter腸炎
腸炎症状が始まる12〜24時間前に発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感などの前駆症状がある。症状は1日から1週間以上続くことがある。
下痢は、軟便から重度の水様、血便までさまざま。多くの患者で、1日10回以上の下痢をする。腹痛は排便により緩和される。多くが自己制限的であり、数日で症状は徐々に軽快する。ただし、10%〜20%で1週間以上持続、治療を受けていない患者の5%〜10%で再発が見られる。
腹痛は右下腹部痛であることが多く、Yersinia enterocoliticaやSalmonella enteritidisと同様に、偽虫垂炎の所見を呈する。
・C. jejuni菌血症
菌血症は、C. jejuniの1%未満。急性腸炎で医師が血液培養を取る閾値を超えないことも影響している。
腸管外C. jejuni感染の3パターン
1) 急性カンピロバクター腸炎の正常な宿主に生じる一過性菌血症。
数日で血培陽性となった頃には、すでに患者は完全に回復していることもある。この場合の予後は良好であり、通常血液培養陽性をみての治療は不要。
2) 免疫正常者に生じる、腸炎後の持続菌血症もしくは深部感染。
この時分離されるC. jejuniは"serum resistant"であることが多い(自然免疫や液性免疫により除去されにくい株)が、抗菌薬が通常良く効く。
3) 免疫不全者で生じる、持続的な菌血症または深部感染。多くは腸炎を伴わない。この時分離されるC. jejuniは"serum sensitive"であることが多いが、宿主の免疫機構の問題により、滅菌するには長期の抗菌薬治療が必要。
・Campylobacter腸炎の合併症
急性期
胆嚢炎、下痢を伴う腹膜透析関連腹膜炎、皮疹(蕁麻疹、結節性紅斑など)、感染性動脈瘤、心膜炎、心筋炎 など
遅発性
・反応性関節炎
下痢の発症後、通常1〜2週間(場合によっては数週間)に出現。
小関節炎。関節炎の期間は1週間から数ヶ月
・ギランバレー症候群(GBS:急性免疫介在性多発神経障害)
GBSの30〜40%はCampylobacter感染に起因。
Campylobacter感染の1〜2週間後に神経症状が生じる。
C. jejuni感染の症候性エピソード後の2か月間にGBSを発症するリスクは、一般集団でGBSを発症するリスクよりも約100倍高い。
カンピロバクターはコンマ型をしたグラム染色というのをすると染まらない(グラム陰性)の細長い棒状の細菌(桿菌)です。
カンピロバクター種には代表的なCampylobacter jejuniのほか、Campylobacter coli、新生児や免疫の落ちている方に主にかかるCampylobacter fetus、その他にもlari、saliensis、hyointestinalis等が知られていますが、ここでは代表的なCampylobacter jejuniに関して書かせて頂きます。
カンピロバクターは世界的にキノロン系薬の耐性化がすすんでいる26 ..
【A】軽度症例は補液などの対症療法のみ。
重症例や免疫不全者は抗菌薬の適応である。
クラリスロマイシン (CAM) 1回200mg 1日2回、3〜5日間
アジスロマイシン (AZM) 1回500mg 1日1回、3〜5日間
エリスロマイシン (EM) 1回200mg 1日4回、3〜5日間
※世界的にキノロン系の耐性化がすすんでいる。
※現在(2016年)はマクロライドが第一選択となっているが、耐性が発現している。
症状 : インフルエンザ様症状であり、ギランバレー症候群の原因となる可能性がある。
〔参考 : JAID / JSC 感染症治療ガイドライン2015 -腸管感染症-〕
○一般感染症
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属
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